利己主義がもたらす狂気
人間が猫から学べることがあるとすれば、自分を愛することだと思う。自分を愛し、何よりも大切にすることに関して、飼い猫ほど徹底している生き物はいない。
常に快適な環境を見つけ、好きなだけ眠ることに執念を燃やしている。どうすればゴハンをもらえるか、どう甘えたら可愛がってもらえるかを心得ている。そして自分がイヤなときは、抱き上げてもいや〜〜な顔を見せて抵抗する。ひどい場合は牙を立てたりする。
自分を愛することも、度が過ぎれば強烈な利己主義になるということ。まぁ、それでも猫の場合は可愛いけれどね!
ミューナも笑えるほど利己主義だけれど、先代猫のリンという三毛猫も見事だった。京都にいるとき、ボクは日付が変わってもパソコンに向かっていた。妻はすでに寝ている。リンもどこかにいただろう。
そんなとき、震度2くらいの地震があった。ガタガタときて心配になったボクは、とっさに妻が眠る寝室へ向かおうとした。そのとたん、スタスタと廊下を避難するリンの姿が目に入った。その素早さは見事なもので、あっという間に安全な場所に身を隠した。飼い主のボクたち夫婦を心配する気配もない。まずは自分の避難が最優先らしい。ラブリーなニャンコだったなぁ。
人間も自分を大切にして愛することは大切だと思う。けれども利己主義が極端に突き進むことになると、周囲のことが目に入らなくなる。やがてそれは狂気へと至るかもしれない。ある映画を観て、狂気をともなった利己主義にビビってしまった。
『ユージュアル・ネイバー』(原題:THE HARVEST)という2013年のアメリカ映画。
この写真を見ていると、病気の子供を抱える夫婦に見える。ところがどっこい、そんなシンプルなものじゃない。
母親は医師で、父は看護師。子供のころから病弱なアンディは学校に行かず、母から治療を受けながら自宅学習をしていた。だから友達なんていない。
ところがある日マリアンという名の友人ができる。両親を亡くして祖父母に引き取られた少女で、偶然に見つけたアンディの家で二人は出会った。マリアンも友人がいないので、アンディとの交流を楽しみにしていた。
ところがアンディの母親は必死になってマリアンを遠ざけようとする。理由は死にかけているから、というもの。だけどマリアンはそんな言葉に屈せず、こっそりとアンディに会いに行く。そしてある日、恐ろしいことを知ってしまう。
地下室にもう一人の少年がいた。意識がなく、延命措置で生きているだけ。そしてマリアンはその少年のレントゲン写真から、恐ろしい名前を目にする。それは新生児のころに誘拐されて行方不明になっている子供の名前だった。マリアンは誘拐された子供が地下に監禁されていると祖父母に訴える。だけど信じてもらえない。
結論から言うと、新生児のときに誘拐されたのはアンディだった。夫婦の実の子供は地下に隔離された少年で、実の息子に肝臓や心臓移植をするため、新生児だったアンディを盗んで育てていた。自分の子供の命を助けるためだけに。これほど究極的な利己主義はないだろう。
母親役を演じたサマンサ・モートンの演技は見ものだよ。まさに狂人でしかない。『ミザリー』でアニーを演じたキャシー・ベイツが可愛く思えるほど鬼気迫る演技だった。
さて結末はどうなるか? 気になる人はぜひご覧あれ、突っ込みどころは多いけれど、スリラー、あるいはホラー映画としては、なかなか面白かった。かなり気持ち悪いけれどね。
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