FFは悟りへの常道＃16
FFは悟りへの常道』は連載記事になっていますので、初めての方はリンクを順次さかのぼって＃１の＜目次＞からお読みください。
前回の記事はこちらです。記事内容は改稿、訂正、加筆等が発生すると思いますので、それぞれの記事の冒頭に最新更新日を記載しています。
この記事の最新更新日：2024年1月31日（水）
本日付けで＃１の記事を一部訂正しています。
（＃15の続き）
大夢くんは、ベートーヴェンくんという新たな自分の分身に出会います。自分の内部に『絶対性』を有する部分があり、直感を通じてその声を受け取るようになります。そしてあることに気づきます。
『全ては必然であり、起きることは必ず起きる』と。
自分の失敗も後悔も不安も、そして成功体験でさえ決められた出来事が起きていただけだと考えます。だから心配することはない。焦ることも、無力感に打ちひしがれる必要もないと思い至ります。そして心の平安を覚えます。ところが……。
せっかく見つけた「運命論」にも、やがて避けることのできない不完全な部分が見えてきます。「運命論」を知ったことで努力しても無駄だと思った大夢くんは、これまでの積み重ねを放棄します。当然ながらスキルは衰え、以前のパフォーマンスが維持できない現実に直面します。それゆえ結果が出ずにますます落ち込みます。
職場で感情的になって他人とトラブルを起こしたり、愛する人を悲しませるようなことをしてしまっても、これは『必然』だったと自分の行為を正当化します。そうして自分に言い訳しても、言葉にできない罪悪感に苦しみます。気がつくと他人とのつながりを以前よりも感じなくなり、「自由意志」で覚えた孤独感が苦しみを伴う孤立感へと悪化します。
さらに世間を見ると、憤りを覚えるような凶悪な犯罪が横行しています。幼い子供が虐待死したり、通り魔的な人物が無差別に他人の命を奪う事件が後を断ちません。戦争が世界から消えることはありません。その結果大勢が命を落とし、生き延びても難民となって苦難を抱え込むことになります。自然は猛威を奮い、台風や地震によって平和な人々の生活を奪い去ります。
それらが本当に「起きるべきこと」だったのかと思い悩み、大夢くんの一時的な心の平安はあっという間に吹き飛んでしまいます。そして彼は、「自由意志」の世界だけでなく、「運命論」の世界も不完全であることに気づきます。完全に八方塞がりの状態です。
大夢くんはせっかく「自由意志」の世界から一歩踏み出したのに、ここで再び「運命論」の壁によって進むべき道が見えなくなりました。戻っても、前へ進んでも待っているのは「不完全」という反りたつ壁です。
ところがここまで来て、ようやく大夢くんは『悟りへの常道」の入り口に立ったのです。不完全な二つの概念に挟み撃ちにされることで、ようやく解決策が見えてきます。そこまで至らないと、次のステップに進めないのです。
「自由意志」が不完全なのは『何か』が欠けているからです。「運命論」が不完全なのは「何か」が欠けているからです。つまりどちらも必要とする『何か』を求めています。
なぜなら現実世界は二元論の世界です。善と悪、光と闇、男と女というように、現実世界においては本来は完全なものが二つに引き裂かれてしまいます。それらは統合されることで、ようやく完全性を取り戻します。
つまり「自由意志」と「運命論」は、男と女の関係性によく似ています。男女は統合することで子供という新しい命が生まれます。それゆえ「自由意志」と「運命論」が共に不完全だと実感することで、それらを統合するという考えに至ります。そしてようやく次のステップに進むことができます。
その統合こそが、この記事のタイトルとなっているFF（フレキシブル・フォーカス）という統一理論です。いよいよ次の章からはFFについて具体的に見ていきたいと思います。
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