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筋肉量と内臓の関係は

昨今のボディビルダーの腹部が異様に肥大していることは周知の事実である。1990年代中盤頃から急速にその傾向にあるというのが筆者のイメージだ。その理由はなんであろうか。

 

安静時において、一日に筋肉は1kgあたり13kcalを消費する。しかし除脂肪体重が1kg増えると、安静時代謝は50kcal前後も増加するという。実は筋肉が増えるとき、肝臓や心臓、腎臓など他の臓器も肥大しているのだ。それらの消費カロリーは非常に高い。

ちなみに1kgあたりでみた場合、肝臓は200kcal、心臓は440kcal、腎臓は440kcalを一日に消費する。

 

では、トレーニングをした場合に増える筋肉量と内臓の比率はどれくらいなのだろうか。実は筋肉が増えると、それに負けない割合で、肝臓や心臓、腎臓も肥大しているのである。

2007年に行われた研究では、競技者と非競技者を比較したところ、除脂肪体重と肝臓・腎臓重量の間に高い相関関係があるとしている。(※1)

 

また2013年に行われた研究では(※2)、新人とベテランのフットボール選手を比較したところ、ベテランの筋肉量は38.8kg、肝臓は1.83kg、心臓は0.33kg、腎臓は0.43kg。新人の筋肉量は31.9kg、肝臓は1.54kg、心臓は0.25kg、腎臓は0.34kgだった。(Table 1)

gh-guts 1

 

そしてここからが面白い。新人たちがトレーニングをして筋肉量を31.9kgから34.7kgへと増やした。すると肝臓は1.54kgから1.74kg、心臓は0.25kgから0.29kg、腎臓は0.34kgから0.38kgへと増加したのである。(Table 2)

gh-guts2

筋肉の増加率は8.5%、肝臓の増加率は12.8%、心臓の増加率は18.6%、腎臓の増加率は11.1%である。

筋肉量が増えれば、臓器のサポートも過酷となり、肥大せざるを得ないのであろう。すなわちボディビルダーの筋肉量巨大化そのものが、内臓肥大を引き起こしている。それが一つの結論だ。

 

ただし筋肉と違い、臓器はトレーニングによって物理的および化学的ストレスがかからない。それは如何にして肥大するのか。

実は成長ホルモンのレセプターは殆どの組織に存在し(※3)、IGF-1合成を活性化させる。横紋筋だけでなく、平滑筋や心筋も、その作用を受けているわけだ。トレーニングによって成長ホルモンが分泌され、IGF-1が肝臓や腎臓、心臓を肥大させているものと思われる。

なお成長ホルモンは小腸の盃細胞を増やし、粘膜下組織、筋層、粘膜固有層、上皮組織などを厚くする。(※4

gh-guts3

 

またトレーニングと同時に成長ホルモンを投与した実験では、除脂肪体重は増加したものの、筋肉量の割合は非常に少ないことが分かっている。(※5、※6)これは水分量の増大に加え、平滑筋や心筋が増加したことによるものであろう。

 

つまり1990年代中盤より成長ホルモンが安価に使用できるようになったため、臓器の肥大がさらに促進されたものと考えられる。またアナボリックステロイドの使用そのものもIGF-1の増加を促す。インスリンの使用がポピュラーになったのも関係しているであろう。

 

1

A comparison of organ-tissue level body composition between college-age male athletes and non-athletes

International Journal of Sports Medicine, 28(2)

 

※2:

Organ Size Increases With Weight Gain in Power-Trained Athletes.

International Journal of Sport Nutrition & Exercise Metabolism, 01 December 2013, vol./is. 23/6

 

3

Tissue distribution, turnover, and glycosylation of the long and short growth hormone receptor isoforms in rat tissues.

Endocrinology. 1998 Jun;139(6):2824-30.

 

※4:

Effect of growth hormone on small intestinal homeostasis relation to cellular mediators IGF-I and IGFBP-3.

World J Gastroenterol. 2009 Nov 21;15(43):5418-24.

 

※5:

Effect of growth hormone and resistance exercise on muscle growth in young men.

Am J Physiol. 1992 Mar;262(3 Pt 1):E261-7.

 

※6:

Effect of growth hormone and resistance exercise on muscle growth and strength in older men.

Am J Physiol. 1995 Feb;268(2 Pt 1):E268-76.

 

 

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山本義徳|やまもとよしのり(ボディビルダー)プロフィール

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山本義徳(やまもとよしのり)
生年月日:1969年3月25日
血液型:A型
出身地:静岡県

【経歴】
1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
◆著書
・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
・サプリメント百科事典(辰巳出版)
・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
など30冊以上

◆指導実績
・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

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