ハリウッドスターの免罪符
ストーリーに明らかな無理があるのに、最後までそれなりに楽しめるという映画がある。そうした作品に共通していることがある。
それは過去に実績のあるハリウッドスターが主演しているということ。まさにその事例に当てはまる映画を観た。
2022年 映画#149
『ポイズンローズ』(原題:The Poison Rose)という2019年のアメリカ映画。先日のブログで書いた1978年が舞台だというのがこの作品。主演はジョン・トラボルタで、あちこちでタバコを吸うし、写真のようなバカでかい燃費の悪そうな自動車に乗っている。現在と比較すると時代の流れを強烈に感じる。
ジョン・トラボルタ演じるカーソンは私立探偵。故郷はテキサスのガルベストンという街。だけどそこを出てLAで暮らしていた。ところがガルベストンにある養護施設に関する依頼を受ける。依頼者の母親が入所しているけれど、連絡が取れないので不審に思っているというもの。
久しぶりに訪れた故郷は、ドクと呼ばれている大物ブローカーが仕切っている街だった。すべてがドクの意向によって動き、誰もが彼の顔色を気にしながら生きていた。カーソンが依頼された養護施設も、ドクに支配された医師が悪質な行為に手を染めていた。
すでに死んでいる入所者の家族に何も告げず、入所費用を騙し取っていた。その金銭を使って麻薬を合成し、売りさばいていたことをカーソンは突き止める。それだけでなくその街のアメフトのスター選手が、試合中に不審死を遂げる。これにもその施設が関わっている可能性があった。
つまるところ、ドクの元に疑念が集まる。カーソンもアメフト選手だったが、ある八百長事件に関係してその街を去っていた。どうやら同じようなことが起きているらしい。そして困ったことに、カーソンの元恋人だったジェインの娘に、その選手の殺害容疑がかけられた。娘のベッキーはアメフト選手の妻で、夫の浮気に悩んでいたから。
とまぁ、こんな雰囲気で物語が進む。ジェインの要請を受けてベッキーを守ろうとするカーソン。当然ながらドクとの対決になる。やがてベッキーがカーソンの娘だったこともわかる。ということで実の娘のためにカーソンが戦うという物語。
簡単に書いたけれど、ストーリーとしては穴だらけ。養護施設の陰謀や、アメフト選手殺しの真犯人もカーソンは知ることになる。だけど真犯人は裁かれないし、かつドクにも警察の手が及ばない。八百長に関することも放置されたまま。
そしてもっとも違和感を持ったのが、カーソンがやたら強いこと。元アメフト選手という肩書きしかない。なのに銃を持たせたら百発百中で、彼に襲いかかる殺し屋たちを次々と撃ち殺していく。なぜこれほどカーソンが強いかという説明がない。ここで最初に書いた、実績のあるハリウッドスターを使うという逃げ道が頭に浮かんだ。
ジョン・トラボルタは過去の実績から言って強いという印象がある。作品はちがっても、彼は悪人に負けないという不文律のようなものが存在している。だからストーリー的な説明がなくても、なぜだか彼の強さに納得してしまう。
例えば、トム・クルーズ、ダニエル・クレイグ、ブルース・ウィルス、リーアム・ニーソンなども同じ。明確な説明がなくても、彼らが強いことを心のどこかで容認している。強さに関する免罪符を持っている俳優を使うことで、ストーリーの穴が見えなくなってしまう。不思議なもんだよね。
だからそれなりに最後まで楽しむことができた。ドクを演じたモーガン・フリーマンもさすがの貫禄だし、カーソンの娘だとわかったベッキーは、ジョン・トラボルタの実の娘であるエラ・ブルー・トラボルタが演じていた。なかなか可愛い娘さんだったなぁ。
原作があるので、もしかしたら小説ではカーソンについてもっと詳しく書かれているのかも。でもジョン・トラボルタを使うことで、その説明がどうでもいいように思えてしまう。だから原作を読まなくてもいいかなと感じてしまった。
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