SOLA TODAY Vol.647
ボクが18歳のころにコンビニでバイトしていたとき、命をつないでくれたのが期限切れのお弁当だった。家出をして自活していたので、とにかくお金がない。
まともな食事にありつけるのは月に数回のことなので、オーナーの「持って帰ってええよ」という言葉は天使の声だった。
だけど今のコンビニやファストフード店は、期限切れの食品を従業員に渡すことなんてあり得ない。厳しく管理されていて、規定の期限が過ぎたものは廃棄処分される。
こうして廃棄食品が日々大量に生み出され、ゴミとなって無駄に消えてしまう。目の前に1日分の総量を一斉に並べたら、人間の業の深さに卒倒するだろうと思う。
どうすれば食品ロスを減らせるのか? なるほど、と思う提言が紹介されている。
「もうやめて新商品」バイトの女子大生が見たファストフード店の裏側
その声を発したのは、ファストフード店でアルバイトをしている女子大生。とてもシンプルだけれど、説得力がある。
「新商品を出さないことが、食品ロス削減につながると思います」と明言している。
ファストフード店の多くはフランチャイズであり、提供するメニューは本部によって決定される。過当な競争を強いられている業界では、新商品を次から次に打ち出していく。でないと他社に遅れをとると思っているからだろう。
だけど実際に店頭に立っている小売店の立場にすると、新商品のほとんどは失敗に終わっているらしい。1000出してもヒットするのは3つ程度で、『千三つ』と呼ばれているらしい。
ファストフード系列で新商品が出されると、当日は大勢の人が注文する。その状態を基準にさせられるので、小売店は翌日も同量の材料等を発注する。ところがそんなにうまく行くわけがない。大抵は次の日にガタッと売上が落ちて、大量の食材が廃棄されることになる。
これはファストフード店だけの問題じゃなく、コンビニでも同じことが言える。スーパーに並んでいる商品も同じだろう。とにかくメーカーは、消費者のニーズに合わせようとしない。自分たちが作ったものに対して、消費させるように持っていく。
商品開発に大量の資金を投入して、CM等の広告料をばらまく。イメージを売り出すことで、消費者のニーズを刺激しようとする。消費者が何を求めているかなんて関係ない。自分たちが開発した新商品を欲しいと思わせることに全力を注ぐ。
その結果が『千三つ』ということ。女子大生の言葉が、どれほど的確なものかわかるよね。これはボクたち消費者からも発しなくてはいけないメッセージだと思う。企業からイメージを植え付けられることに抵抗するべきだろう。
食品ロスを少しでも減らすためには、消費者が声をあげるしかない。でないといつまでも大量の資金と貴重な食材が、新商品とともに消えていくだけになるような気がする。
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