尾崎紀世彦さんのウッドベース
奥田健次です( ´ ▽ ` )ノ
大学を退職して、パートタイム教授やってます。心理臨床、教育相談を仕事に全国行脚しています。
西軽井沢での生活も3年目を迎えました。
先日、信州・松本&安曇野へ行ったときのことです。とあるアンティークショップに立ち寄りました。
珍しい売り物はもちろん数多く並んでいたのですが、お店の入り口から「売り物でないもの(オーナーが廃車にした外車とか)」、なかなか絵になるディスプレイというか景観というか、そういう佇まいのお店でした。
あれこれ良い物が揃っていて、お値段的には決して安いわけではありません。で、ギャラリーみたいになっている奥の間にも通していただきました。
そこで最初に目を引いたのがコントラバス。ウッドベース。コントラバッホ。
かなり年代物。
ギャラリーに置いてあるものの半分くらいは、ディスプレイ商品(非売品)っぽくて値札が付いていません。逆にディスプレイっぽいけど、半分くらいにはきちんと値札も付いてました。
ちなみに、俺は社会人になる前にコントラバス(ウッドベース)を買いたいなと思っていましたが、何せ若いうちは何度か引っ越しするでしょうから、それを買える経済的余裕が出てきても衝動買いしないように気をつけていました。
でも、もうさすがに軽井沢から引っ越すことは無いでしょう。しかもなんせ5,000坪ざますわ。敷地面積の割合で考えれば、コントラバスが猫の首輪に付けるバイオリンのブローチくらいザマス、スネちゃま。
だから、まあ買っても良いかな。でも、昔ほど欲しいとは思わないな。
ちなみにボロボロやな。なんぼくらいするんでしょうね?
さーて、How much?
と、ウッドベースをくるりと見回しても、どこにも値札が付いていませんでした。
「あーあ、やっぱりこれはディスプレイ品なんやな〜」と納得。
ウッドベースを触っていると、店長がこのウッドベースの由来を、同行の仲間にしみじみと話し始めました。
「このコントラバスはねぇ、尾崎紀世彦さんの私物なんですよね」
「ええ!? そうなの?」
「尾崎さんと古くからお付き合いがあったもんだから、亡くなられたときに整理に行って、それでこれを引き取ったんですよ」
「そうなんだー」
「もうボロボロで弦も張り替えないとだめって言われたけど、でもほら、結構いい音がするでしょ?」
「そうだね〜」
「こないだコントラバスを演奏できるお客さんが来られて、1曲演奏してくれましたよ、ボロの割に結構いい音が響いてましたよ」
「尾崎紀世彦さんの思い入れがあるから、じゃあ売り物じゃないんだねー」
「・・・・・・」
こんな感じで一昨年に亡くなられた尾崎さんのことをしんみりと話していたので、「ああ、やっぱりこれ手放すつもりゼロなんやなー」と諦めました。結局、値札も付いてなかったし。
もちろん、尾崎紀世彦さんという方は世代的には親世代以上の人で、俺はどんな人か顔も名前も知らないです。名前は聞いたことがあるかなーという程度。
真面目に「着物のデザイナーみたいな人だっけ?」と思いましたが、それは「きよ彦」でした。
仲間に思い切って聞きました。
「尾崎紀世彦さんって、何の人?」
「有名な歌手よ」
「(ここで着物デザイナーではないと気づく)・・・どんな歌が代表曲だっけ?」
「あれよ『また逢う日まで』よ」
「どんな曲だっけ?」
「〽また逢う日まで逢える時まで〜♪」
「んー、なんか聞いたことがあるよなー」
こんな感じで話しつつ。どうせダメなんでしょうが、念のために店長に聞いてみましたよ。
「あのー、これって値札が付いてないですけど、売ってないんですよね?」
さっきまでしんみりと生前の尾崎紀世彦さんとの思い出話をしていた店長は、そう聞かれた瞬間・・・。
「えっ! これ、買ってくれるの!?」(((o(*゚▽゚*)o)))
「え? いや、あまり高いと買えませんが…」(((゜д゜;)))
数秒前まで、尾崎紀世彦さんとの思い出話にしんみりしていたのが、急激な展開にビックリ。
「古い物だし、裏にブランド名が書いてあるからネットで調べてみて! アメリカのブランドだと思うけど、そんなに高い物じゃないから!」
そう言われて、スマホでこのブランドの中古価格を調べたら、確かに合板で作られた安物でクラシックのプロが買うような高価な楽器ではなかったです。合板のために塗装も剥がれやすく、すでに剥がれや塗装のヒビ割れが目立ちます。
でもなんかさ、こういう展開になるとは思っていなかったので、ヤフオクで見つけた同じくらいの最低価格(誰も入札していない)と同じでは失礼かと思って、しかも尾崎紀世彦さん愛用のウッドベースという付加価値を付けて、ヤフオク最低価格の4倍の値で「ヤフオクの価格より、ちょっと上になります
が○万円で売っていただければと」と申し出てみました。まあ、ヤフオクの最低価格が安すぎというのもありますし。
店長も事前に調べていたのでしょう、「えっ、本当に!?」と、とても嬉しそうに言って下さるので、「はい、でも持って帰られないので、配送込みでしたら」「もちろん届けますよ!」ということで、あっという間の商談成立。
これには、同行の者もみんな驚いていました(^▽^;)
帰る道のりで「いやぁ、まさかあんな風に話していたから、てっきり絶対に手放さないんだと思っていたんだけどね(^^;)」と。俺もそう思っていましたよ。まさか瞬間、商談になるなんて思いもせなんだ。
でも、もともと手に入れたいと思っていたウッドベースだし。確かに、新品でも同じグレードのコントラバスなら、5、6万円でも売ってます。弓なしで、ボロボロで、それら新品よりも少し高く申し出たのは、やっぱり気持ちじゃん、付加価値じゃん。
逆に5、6万円の新品なら、買わなかったと思う。こういう楽器については、古いから良いのだ。1960年代の制作ということで、うちの廃校が誕生したのと同じくらいだから、ちょうどマッチするでしょ?
なおかつ、俺の世代ではないけどさ、尾崎紀世彦さん愛用のベースと出会ってそれがうちの学校にやってくるというのも、何かご縁みたいなものを感じるし。こういうときって、迷ったりしたらいかんのですよ。後から「やっぱり欲しい!」と思っても、売れちゃったでお仕舞いですから。
だから衝動買いでもないです。
これを購入するのに、誰も反対せんかった。
そんなわけで、先日、安曇野から尾崎紀世彦さん愛用のウッドベースを、店長が届けて下さいました。
ちゃんと、到着する前までにウッドベース用のスタンドも購入して、待っておりました。
予想通り、雰囲気ぴったり。
まあ、俺は音楽家族の生まれだし、うちの学校で前の所有者は講堂で室内楽とかの合宿もやっていた記録が残っています。だから、これは一般の方には触ってもらうものではないです。ネックとかボディーとか、本当にもうボロボロです。
コントラバス奏者を呼んで、そんときにプロに触って演奏してもらいましょう。「張り替えた方が良いよ」と言われたので、すでにコントラバス用のストリングも買いました。一番安いので4本セット、1万3千円也。弓はもともと無かったようです。ま、尾崎紀世彦さんはクラシック奏者でなくて、きっとジャズっぽくピッチカートで弾いていたんだろうと思います。
なかなか絵になってますよ。
弓もそのうち購入します。クラシックの楽器ですから、当然ピンからキリまで。60万円もする弓もあれば、7千円くらいのもあるくらい。ジャーマンタイプとフレンチタイプというのがあるので、これについてはコントラバス奏者に相談して決めます。
尾崎紀世彦さんの大ヒット曲『また逢う日まで』。調べたら1971年に発表された曲。ってわけで、俺の生まれる前の曲ですから、存在も知らなくてもしょうがないね。作詞・作曲が「阿久悠、筒美京平」って、これはスゲーよな。
尾崎紀世彦ファンで、このウッドベースを見たことがある人はうちにありますからね。そこで逢えたら『また逢う日まで』やね。ご縁ができたので、すでに故人ですが俺も尾崎紀世彦ファンになりました。
youtubeにたくさん動画アリマス。『また逢う日まで』
渋谷生まれの茅ヶ崎育ち。それにしても、スゲーもみあげ。なるほど、尾崎さんもイギリス人の血が入ってるんやて。
そんなわけで、ひょんなことから尾崎紀世彦さん所有のウッドベースが、めぐりめぐってうちの学校に到着したのでした(^_^)v
奥田健次
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