今の香港の姿が見える小説
朝は昨日と同じくらいに冷えたけれど、午後になってぐんぐん気温が上がった。今日の神戸の最高気温は15.6度。確かに肌感覚としても暖かさを感じる。でも明日以降はさらに気温が上がり、４月並みの気温になるらしい。明日はまだバレンタインデーなのにね。
ちなみに明日のバレンタインデーは大安なので、本気で告白する人や、プロポーズには最適かも。日本では女性が男性にチョコレートを贈るという習慣になってしまったけれど、本来は大切な人に想いを伝える日だったはず。だから男性からの告白やプロポーズでもいいと思うけれどね。
そんな平和なバレンタインデーが続く社会でありたいもの。だけど世界の情勢を見たら暗澹たる気持ちになる。ウクライナではロシアとの戦争が継続中だし、中東のガザ地区でも大勢が命を落としている。とてもバレンタインデーという雰囲気じゃない。
日本の近くでは台湾有事が無視できない。いずれなんらかの動きがあるのは確実。そんな中国共産党の強圧的な支配は、1997年に中国へ返還された香港ではすでに取り返しのつかないことになっている。先日も実質的にカナダへ亡命した周庭（アグネス・チョウ』氏に対して、香港警察が指名手配したことを発表した。
現状における香港は「一国二制度」が継続されている。返還から50年後の2047年まではその制度が継続されるはず。ところが2020年に香港国家安全維持法が施行されたことで、香港の「一国二制度」は実質的に崩壊している。
香港警察は市民の財産を安全を守るのが仕事。だけどすでに中国政府の抑圧に飲み込まれ、民主化運動に参加した人たちを次々と指名手配している。そんな香港警察の実情はどうなっているのだろう？ そのことについて正面から向き合った素晴らしい小説を読んだ。
2024年 読書＃14
『香港警察東京分室』月村了衛 著という小説。ボクは月村さんのファンで、彼の著作は全て読んでいる。取り上げるテーマは作品によって違うけれど、警察組織や自衛隊組織の素晴らしさと問題点を常に提起されてきた。今回はその鋭い視点が香港警察へと向けられた。
まだ昨年に出版されたばかりの小説なのでネタバレはしないでおこう。香港国家安全維持法の施行により、思想犯や政治犯が国外逃亡している。今年になって指名手配されたアグネス・チョウさんのような事例。
そこで香港警察は日本政府に申し入れることで、共同捜査できる組織を作ることになったという設定。組体部特殊共助係という組織で、日本から管理官から捜査官を含めた５人、香港からも同じ職責の５人が集まり、10人で結成されたチーム。
このチームの目的は、香港の学者でデモを扇動したとされるキャサリン・ユーを逮捕して香港に連行すること。日本に潜伏していることがわかっている。この女性教授を探す過程で、現在の香港の実情が顕になってくる。さらに中国共産党の支配が、すでに日本政府にまで手が伸びているという恐ろしいフィクション。いや、これはすでにフィクションではないとボクは思う。
香港側のチームは精鋭揃い。一方日本の５人は訳ありのはみ出しものばかり。それぞれに複雑な事情を抱えていて、その10人を通じてドラマが展開していく。とにかく読み出したら止まらなくなるのは必至。何度か戦闘シーンが出てくるけれど、まるで実写の映画を見ているような生々しい描写だった。
バラバラだったこのチームは最後に結束する。そして中国政府の恐ろしい陰謀が明らかにされるという内容。久しぶりに一気読みしてしまった。このチームは結束を固め、さらに次の事件に向かいそうな予感。続編が出るのかも。この小説を通じて、中国と香港、そして日本の実情を大勢の人に実感してほしいと思う素晴らしい作品だった。
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