ポール・マッカートニー 告白
どんよりした曇り空だけれど、今日の気温は春。たまに小雨が降るなかを散歩していると、あるお寺で早咲きの桜を発見。
曇り空なので写真では伝わりにくいかな。肉眼で見ると、ため息が出るほど美しかった。
関東地方は寒いという声を聞くけれど、神戸は少し歩くと汗ばむような気温。紫陽花は新しい葉を出してきたし、ソメイヨシノのつぼみはかなり大きくなってきた。
買い物途中にある霊園では、お彼岸に備えて大規模な清掃の真っ最中だった。明日はホワイトデーだから、いよいよ春はもうすぐだね。
さて図書館から到着メールが届くのを長いあいだ待ち望んでいた本を、ようやく昨晩に読了した。
『ポール・マッカートニー 告白』ポール・デュ・ノイヤー著という本。
著者は音楽ジャーナリストで、1970年代の終わりからポールをインタビューしている。ビートルズの出身地はイギリスのリヴァプールで、著者もそこの出身。だから現在に至ってもポールと懇意にしているらしい。
そんな40年以上にわたるポールのインタビューをまとめたのがこの本。ビートルズやポールに関する本は数え切れないほど出版されているけれど、ポール・マッカートニーという人物について書かれた本としては、おそらく最高のものだと思う。
その理由はビートルズ時代のことだけでなく、その後のポールについて詳細に書かれているから。どうしてもビートルズ時代のことばかり取り上げられがちだが、ポールは今も現役のミュージシャン。今年の4月には東京でライブも開催する。
ビートルズ時代にジョン・レノンとともに書いたヒット曲は音楽史に残るものばかりだけれど、それ以後も数多くのミリオンセラーを送り出している。むしろビートルズ解散後のポールについて語らないほうが、明らかに不自然だと思う。
500ページを軽く超える本だし、大好きなポールの言葉で満ちているので、じっくり時間をかけて読んだ。1日100ページと決めていたので、結局5日もかかってしまった。でも最後は本を閉じるのが残念だと思うくらい素敵な本だった。
ボクが知らないこともいくつかあって、とても楽しかった。まだビートルズがブレイクする前、ポールがジョンと二人でヒッチハイクしながらイギリスからフランスまで行った話が最高だったなぁ。
あの二人を偶然にも車に乗せた人は、まさかその数年後に世界中のミュージックシーンを席巻する二人だとは思わなかっただろうね。ポールはジョージ・ハリスンとも同じようにヒッチハイクで旅をしたらしい。
印象に残ったエピソードは数えれ切れないほどある。そのなかでも驚いたのが、ポールが強盗にあって殺されかけたという事件。
ビートルズが解散してから、ポールはウイングスというバンドを結成する。だがまだ爆発的なヒットが生まれる前、その起爆剤となった『バンド・オン・ザ・ラン』というアルバムを作っているときのこと。
知っている人間がいない場所で録音したいと思ったポールは、契約しているEMI系列の世界中のスタジオを探す。そこで目につけたのがナイジェリアのスタジオ。このアルバムがリリースされらのは1973年だから、実は当時のナイジェリアのラゴスという場所はかなりやばかったらしい。
それまで参加していたメンバーが二人脱退し、ポール、リンダ、そしてデニー・レインという3人だけで録音した。とにかくホテルでもスタジオでも虫だらけで辟易したそう。でも虫より怖いのが強盗。
録音できたばかりのアルバムのタイトル曲である、『バンド・オン・ザ・ラン』のテープを持って歩いていたポールたちは、強盗に襲われた。最初はうまく追い払ったが、銃やナイフを持って再度襲ってきたからたまったものじゃない。
結局、金銭と録音したばかりのテープを奪われてしまう。命が助かったのは奇跡的なことで、黒人だったら確実に殺されていた。でもポールはテープを奪われたのがかなりショックだったらしい。
でもその後のポールのコメントが面白かった。ビートルズ結成当時は録音装置なんて個人で持っていないから、ジョンと二人で新しい曲を作っても必死で覚えたらしい。でもいつしか文明の利器になじんでしまって、自分の頭で記憶することを忘れていたことを反省した、とインタビューに答えている。
この事件で音楽を始めたころの初心を思い出すことになり、素晴らしいアルバムが完成した。『バンド・オン・ザ・ラン』は今でも伝説になっているアルバムだし、次作の『ヴィーナス&マース』とともに、ボクにとってバイブルのような作品になっている。
1980年に暗殺されたジョン、病気で早逝してしまったジョージ、そして30年以上も連れ添って亡くしてしまった元妻のリンダについて、ポール自身の言葉で彼の率直な想いを知ることができて幸せだった。
ジョークで「車椅子になってもステージで歌っているよ」と言っていたけれど、彼なら本当にそうなるかもしれない。70歳をとっくに過ぎて、いまだにすべての曲を発表当時のキーで歌っているなんて素晴らしすぎる。普通はテンポを落としたり、キーを下げたりするからね。
本当のビートルズ世代じゃないボクにとって、ポールは生きたビートルズでもある。だけどビートルズ以降の彼こそが、ボクにとっての『ポール・マッカートニー』というスターそのものなんだよね。これからも素敵な歌声を、少しでも長く聴かせて欲しいと願っている。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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