日本人として恥ずかしい
トランプ大統領が来日中。きっと東京は厳戒警備で大変だろうね。ツイートを見ていると、楽しそうにゴルフをされている安倍総理とトランプ大統領の写真がアップされている。無事に日程が消化できて、今後の日米関係にとって有意義な来日になればいいね。
ところが西日本で、爆破予告の電話がいくつかあったらしい。電車が運転を見合わせたりしている。おそらくトランプ大統領の来日に抗議したいやつの犯行だと思うけれど、タチが悪い。陰湿なやつだよなぁ。
そもそもなんで西日本やね。大統領は関東におるんやで。きっと厳戒体制の関東で電話をかける勇気はなかったのだろう。犯人がどういう人間なのかはわからない。もしかしたら日本人とは限らない。でもどちらにしたって、やはり日本人として恥ずかしい。「お・も・て・な・し」精神の、かけらさえもないからね。
さて、同じく日本人として恥ずかしくなる本を読んだ。
『新・観光立国論 イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」』デービッド・アトキンソン著という本。
なぜこの本を読んで、日本人として恥ずかしいと思ったのか。
まずは本の内容。日本という国は少子高齢化なので、現状のままではGDPの成長は望めない。人口というものは、GDPに大きな影響を与える。高齢者ばかりが増え、消費の中心となる若い世代が減っている現状では、当然といえば当然のこと。
そこで著者は人口を増やすため、「短期移民」を推奨している。日本は普通の移民に対して壁が厚い。だけど短期間だけ滞在して、お金を使ってくれる「短期移民」ならGDPを成長させることができる。
つまり著者の言う「短期移民」とは、日本を訪れる観光客のこと。観光客を日本に集めて、お金を落としてもらうことでGDPを成長させることができる。
2020年の東京五輪を控え、大勢の外国人が来日していると報道されている。インバウンドという言葉が、かなり一般的に認知されるようになった。だけど増えたと言っても、世界的なレベルから見ればかなり少ない。この本を読んでそのことを思い知らされた。
観光大国になるために欠かせない要因は、「気候」「自然」「文化」「食事」という4つの要素。世界でもっとも観光客を集めている国は、この4つが充実している。例えばフランスやスペインがそう。
日本もその4つが見事にそろっている。それなのに海外から訪れる人たちは偏っている。ほとんどが台湾、韓国、中国の人たち。もっともお金を使ってくれるヨーロッパの裕福層たちの来日は、何十年も横ばいのままという状況。まったく増えていない。
その理由が、資料を使ってとてもわかりやすく書かれている。簡単に言えば日本人の上から目線で、相手の立場に立った観光を意識していないことが理由。他国の努力に比べたら、日本は何もしていないのに等しい。
とにかく読み進めていて、日本人として恥ずかしくなった。経済大国だったというプライドのせいか、観光大国に変化することの重要性と必然性がわかっていない。今のままでは日本は世界から見向きされなくなってしまう。大勢の人に読んでほしい、と心からそう思った素晴らしい内容だった。
そしてもうひとつ日本人として恥ずかしかったのが、著者の書いた文章。デービットさんはゴールドマンサックスのアナリストとして来日して、日本が好きになって退職後も京都で暮らしておられる。今は文化財を守る会社の代表取締役。
だから日本語は流暢なんだと思うけれど、実はこの本を日本語で書かれたのは著者。翻訳本じゃない。ボクは読み始めて、とても読みやすく、そして理路整然とした文章なので、うまい翻訳だと思って名前を探した。だけど翻訳者の名前がなかったのでビックリ!
編集者の人にチェックしてもらったとは書かれていたけれど、とにかく文章のうまさに驚くばかり。こんな素晴らしい日本語の文章を書いたのがイギリス人だと知って、日本語が母国語のボクは、マジで恥ずかしくなった。
とにかく超オススメの本。まだ2年前に出版されたものなので、今の世相とはそれほど離れていない。むしろ東京五輪を控えた今だからこそ、大勢の人に読んでもらうべき著作だと思う。今までの常識が吹っ飛ぶと思うよ!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。