『車輪の再発明』に要注意
ここ10日ほど、新しい小説の資料を読み込んでいた。まだまだ読まなくてはいけない資料があるけれど、そればかりやっていられない。
ということで、今日から新作を書き始めた。どうせ最初に決めたプロットは変わってくるだろうから、同時進行しながら資料を読み込んでいくしかない。
どんなことでも、まずは始めることが大切。今日あるツイートに書かれていたことがある。「新しい何かをやろう」と思うと、人間の脳は新しいことを始めるストレスを感知する。そのストレスを受けたことで、すでにやったような気持ちになるらしいwww
だから「やろう」と思うだけでは、やる気なんて湧いてこないということ。実際に行動に移さないと、やる気も未来の展望も見えてこない。考えてから走るより、走りながら考えるほうが結果として効率がいいということ。だから見切り発車は、決して悪いことじゃない。
だけど昨日ある本を読了して、勇み足にならなくてよかったと思った。
『車輪の再発明』という慣用句を知っているだろうか?
「広く受け入れられ確立されている技術や解決法を知らずに(または意図的に無視して)、同様のものを再び一から作ること」
つまりすでに他人がやっていることを、一から自分がやっても発明ではないということ。この無駄な行為を『車輪の再発明』と言う。そんなことを感じさせられた本を読んだ。
『きのうの世界』恩田陸 著という小説。
先日恩田さんのエッセイを読んで、失礼ながらボクと似た感性をお持ちなのを知った。それでできる限り、恩田さんの小説を読破しようと決意した。その第一弾がこの作品。
もうマジで驚いた。なんて素敵な世界観なんだろう。現実と幻想世界が奇妙に入り組んで、つかみどころのない世界が眼前に広がる。だけど殺人事件という太い筋が通されていて、物語の軸がブレない。だからこちらの意識が停止することなく、次のページへと進もうとする。
今までこんな作風の作家の小説を読んだ記憶がない。ミステリであり、どこかファンタジーの匂いもする。だけど同時に、言い知れない恐怖も覚える。なんて複雑な魅力にあふれた物語なんだろう。
東京から離れたある村で、殺人事件が起きる。東京でサラリーマンをしていた男性で、突然失踪して1年後に刺殺体で発見される。そこは大きな塔が3本もある不思議な村だった。そのうちの1本は破壊されている。
その被害者は、長い時間をかけてその村の秘密を調査していた。一度見たものを、瞬時に記憶するという特殊能力を持っている男性だった。やがてその土地の秘密を知ったころ、彼は遺体で見つかる。
その殺人事件に興味を持ったある女性も、この村に引きつけられるようにしてやってくる。なぜ被害者がここに来たのか? その理由を追求しているうち、ある種の核心のようなものをつかむ。だがその彼女も、宿泊していたビジネスホテルで突然死する。
とにかくラストで驚く。その土地が持つ秘密に仰天した。そして3つの塔の役割を知って、自分がこの物語の世界に深く入り込んでいたことを知る。その秘密を知りたい人がいるかもしれないので、ネタバレは控えておこう。
この本を読んでおいてよかった。やはり最初に感じていたように、ボクが小説を通じて表現したい世界観とよく似ている。この作品を読まなければ、『車輪の再発明』をやらかしていたかもしれない。
同じではなく、似ていてもボクしか書けないものにしなくては。そのことに気づかせてもらえたと思う。もっと恩田さんの著作を読んで、刺激を受けたい。そしてそれは、『車輪の再発明』を防ぐことになるかも。本当に素晴らしい小説だった。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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