名コンビの絆の深さに感動
映画や小説にとって、登場人物のキャラ設定ほど重要なものはない。だけど実際に小説を書いていると、思ったようにキャラが立っていないことのほうが多い。
これはひたすら優れた作品をインプットして学んでいくしかない。そんなお手本として、オススメの作品がある。スケールが大きくて、かつ登場人物が多い物語。ボクもまだそのシリーズを読み始めたところなので、その全貌までまだはるかに遠い。
それでもこの作品は勉強になると確信した。異世界を描いた作品なのに、その世界観がありありと眼前に迫ってくるから。それはキャラが生き生きとしているせいだと思う。なかでもボクの大好きなコンビがいる。今回はそのコンピの過去と深い絆が描かれた内容だった。
2021年 読書#64
『十二国記 東の海神 西の滄海』小野不由美 著という小説。いまの段階で16作品が出版されている『十二国記』シリーズで、ボクはこの作品で3作目になる。だからまだまだこの旅は始まったばかり。
十二国記は、ボクたちが暮らす世界と『虚海』によって隔てられた異世界が舞台。だけどたまに十二国の人間が、地球に生まれてしまうことがある。ボクが最初に読んだ『月の影 影の海』の主人公だった中嶋陽子という女子高生もそうで、彼女は慶国の王となっている。
その次に読んだ『風の海 迷宮の岸』も同じく地球に生まれてしまった子供が、実は麒麟という王を選ぶ神獣であり、戴国の王を選ぶ泰麒だった。陽子も泰麒も日本で生まれているので、異世界を受け入れるのに最初は苦心していた。
この二つの作品にからんできたのが、延王である尚隆、そして延麒である六太という二人。延の国の王である尚隆はユニークな人物で、王であるのに民衆に混じって過ごしていることが多い。最初の作品で陽子を助けたのが彼で、もちろん延国の麒麟である六太も協力している。
そして2作目の泰麒を助けたのもこの二人だった。読めば読むほど魅力的なコンビで、ボクはこの二人が大好き。文庫本の表紙で金髪なのが六太、二枚目の武士姿が尚隆。この二人の過去を描いたのが今回の作品だった。
実はこの二人も日本の生まれだった。ともに応仁の乱から戦国時代にかけての人物。麒麟としての使命に目覚めた六太は、ある日十二国記の世界から日本へと戻った。麒麟だけが自由に行き来できる。そこで村上水軍と戦って滅亡寸前だった小松家の後継だった小松尚隆と出会う。
この二人の出会いの物語と、前王の破壊行為によって住民が苦しんでいる延国を立て直していく二人の活躍が描かれている。尚隆はあえてうつけ者としてふるまうことで、民衆の真の希望を汲み取っていく優れた人物だった。わかりやすくいえば織田信長や、遠山の金さんのような人物。
延の国で謀反が起き、六太が人質になる。相棒を助け出すことで延の国をひとつにまとめていく尚隆が本当にカッコいい。まさに王様という風格がある。だけど海賊だった日本時代の雰囲気も残っていて、六太との名コンビはまるで漫才のよう。
十二国記の世界で王になると、人間は年齢を重ねることがない。だから500年前の尚隆が現代の陽子を助けることもできる。この物語を知らない人にはわかりづらい世界観だろうけれど、絶対に面白いので少しでも興味を持った人はトライしてみては? ハマってしまうよ〜!
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