多様性では語れない性的嗜好
昨晩ゲストに呼んでいただいて武田はるかさんの番組で、『夢体脱』の経験中には人間の潜在意識がリアルに表出するという話をした。特に経験の初期に出やすいのが性欲。遺伝子を後世に残すために性欲は欠かせない。これがなければ人間を含めた動物の子孫が絶えてしまう。
ただ人間の心理は複雑で、性欲が異性に向けられるとは限らない。最近でこそ多様性への理解が進み、同性に対する性欲の存在が認知されてきた。以前なら異常だと言われていた性的嗜好が、マイノリティーであっても容認されつつある。もちろんいまだに同性愛者というだけで死刑になってしまうような国もあるけれど。
だけど多様性の容認という耳障りのいい言葉では、決して受け止めきれない性的嗜好がある。その多くは犯罪として扱われることが多い。代表的なのは小児性愛者たち。これらは多様性という言葉を駆使しても、社会に容認されるのは無理だろう。要するに現代社会における『多様性』というのは、あくまでもマジョリティたちに容認される範囲内だということ。そのことを痛感させられる小説を読んだ。
2023年 読書#76
『正欲』朝井リュウ 著という小説。タイトルが素晴らしいと思う。『正欲』と書いて(セイヨク)と読む。言葉として性欲にかけてあって、正しい性欲と、正しくない性欲に関して読書に問いかける内容になっている。
まだ新しい作品なのでストーリーは割愛する。物語の冒頭で、子供たちを集めて水遊びをさせていた3人の男性が逮捕される。児童ポルノの摘発ということで、男児のわいせつ画像を撮影したという容疑。いわゆる小児性愛者として摘発されている。
この3人が逮捕に至る過程が、様々な人物を通して描かれていく。ただこの3人のうち2人に関しては、小児性愛者ではない。明らかな冤罪。だけど彼らはそのことを警察や検察に説明できない。なぜなら到底理解されない性的嗜好だから。ここだけネタバレしておこう。
『流れる水』に性欲を感じる、という性的嗜好。
ボクは初めて知ったけれど、そういうことはあり得るのだろう。だけど一般社会で理解してもらうのは難しい。だから子供がいたことで、小児性愛者というレッテルを貼られてしまうし、弁明することも諦めてしまう。それほど辛い思いをして生きてきたから。
この小説を読めば、一般的に言われている多様性の容認という言葉が白々しく聞こえてくる。明日という日を生きるために、本当の自分を隠し続けなくてはいけない人生。現代社会で取り上げられている多様性が、マジョリティたちの上から目線でしかないことがわかってしまう物語。素晴らしい小説なのでオススメだよ。
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