人生の負債請求は予告なし
ボクは経理・財務関係の仕事が長かったので、人生を簿記で考えることがある。自分の人生の貸借対照表（BS）をよくイメージする。
BSの基本はシンプル。左側の借方には資産。右側の貸方には負債と資本が計上される。『資産＝負債・資本金』という図式が成立する。つまりどれだけ複雑な人生を歩んでいる人でも、借方から貸方を引けばゼロになる。人生の本質はゼロ、つまり『無』だということ。
ただ負債、あるいは繰越損失がある限り、その請求はいつかやってくる。過去生から含めた全ての負債、そして繰越損失を返済して、『資産＝資本』となった状態が解脱と呼ばれる。こうなれば輪廻転生の囚われから抜け出すことができる。
油断ならないのは、負債請求が予告なしにやってくるということ。銀行の借入金のように返済日が決まっていない。いきなり請求が来て、返済を求められる。それで返済できなければ繰越となり、また別の人生に生まれ変わってやり直すことになる。これはなかなか厳しい。負債請求は予測不能だから。
ある映画を観ていて、そのことが頭に浮かんだ。スピリチュアルと無縁な作品だけれど、人生の負債請求の厳しさを感じさせる良作だった。
2023年 映画＃132
『クリード 過去の逆襲』（原題: Creed III）という2023年のアメリカ映画。ボクシング映画で有名な『ロッキー』シリーズのスピンオフ作品。主人公はロッキーのライバルで親友となったアポロの息子であるアドニス。
この作品は『クリード』シリーズの３作目。もちろん前２作は観ているし、大好きなシリーズ。この作品も最高で、相変わらずボクシングシーンでは興奮して手に汗を握ってしまう。まだ新しい作品なのでネタバレはしないのでご安心を。
アドニスは現役最後の試合で勝利を飾り、ヘビー級チャンピオンのままで引退する。そして妻と娘の３人で優雅なセレブ生活を送っていた。ところがある日、古い友人が訪ねてくる。それはアドニスにとって、いきなりやってきた人生の負債請求だった。
少年時代のアドニスは施設暮らし。兄のように慕っていたのはデイムという人物。ボクシングの天才で、アマチュアの大会で優勝していた。2人は同じグループホームで暮らしていたが、父親代わりの人間からひどい虐待を受けていた。そのことがきっかけで事件が起きる。それがアドニスとデイムの別れだった。
アドニスはボクシングの元世界チャピオンとして優雅に暮らしている。一方デイムは、先日に刑務所から出てきたばかりだった。その出来事にアドニスは関係している。彼がずっと引きずってきた出来事だった。ということで、この辛い過去に向き合うことになるアドニス。
その辛い過去とは？ そして彼がその過去にどうして向き合ったか？
ネタバレはここまでにしておこう。『グリード』シリーズのファンならもちろん、『ロッキー』等のボクシング映画好きの人は必見。過去作品を見ていなくても大丈夫。レギュラーキャストに馴染めない程度のこと。ただこの作品にはロッキー・バルボアこと、シルヴェスター・スタローンは出演していないけれどね。その理由は前作を見ている人ならわかるだろう。
とにかくどんな人にも人生の負債請求はやってくる。そうでないと生まれ変わっていないだろうから。アドニスの葛藤と戦いを観ることで、突然やってくる負債請求に対する心の準備ができるかもしれない。そんな素晴らしい作品だった。
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