日本では得られない「死ぬ権利」
あと2ヶ月すれば、半年ぶりにミューナの定期検診がある。いつもは慢性腎不全の様子をチェックしてもらい、薬をもらって帰ってくるだけ。だけど次回の11月には主治医の先生に尋ねようと思っていることがある。
不治の病だから、いつかは覚悟をしなければいけない。もうこれ以上治療が無理だとなった場合、猫の場合は安楽死という選択肢がある。これまで過去に2匹の猫を看取った。経験のある人ならわかるだろうけれど本当に辛い。
だからミューナに関しては、余計な苦しみを与えたくない。だからボクの頭には安楽死という言葉がチラついている。その安楽死について、主治医の先生の見解を尋ねるつもり。どのような選択をするとしても、獣医さんの協力が必要だから。
苦しくても命ある限り生きてほしい、と願うのは飼い主のエゴかもしれない。でも苦しませたくないから安楽死させたい、というもの飼い主のエゴだという気がする。それゆえそうした事態に備えて、主治医の先生の考えを知っておきたいと思うから。
だけどこれが人間だとそうはいかない。治療不可能な病気であっても、日本では安楽死が認められていない。それは殺人になってしまう。でも本当にそれでいいんだろうか? そのことを世に問う本を読んだ。
2023年 読書#80
『私の夢はスイスで安楽死 難病に侵された私が死に救いを求めた三十年』くらんけ 著という本。ネットで記事を読んで、気になっていた本だった。
著者は2021年9月5日に安楽死をするためにスイスへ向かった。だけど結果として薬を口に含んだ段階で中止。それで日本に戻ってこられたけれど、スイスで得た「死ぬ権利」は永久に保持されているそう。だからいつかは死ぬためにスイスに向かうことになるのかもしれない。
この本は著者が幼い頃からCIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経症)という難病を発症し、30代になって死を決意するまでの経緯が書かれている。この本を読めば、彼女が死を選択しようとしたことを否定できない。むしろ「死ぬ権利」を得られない日本の医療の不備を感じてしまう内容だった。
安楽死という言葉には誤解があるそう。ボクもこの本を読んで初めて知った。
安楽死:致死量の薬を医者に投与してもらう死
介助自殺:致死量の薬を自ら服薬する死
スイス等で認められている安楽死というのは介助自殺を指す。安楽死を認めている多くの国は、正式な意味での安楽死を認めていない。
だから著者は自分で服薬した段階でストップした。もし医師に任せている場合なら、そのまま人生の最後を迎えておられただろう。ただスイスで得た権利は永続的なので、死ぬ意思が固まれば渡航するだけでいいらしい。
でも日本の場合は、安楽死も介助自殺も認められていない。それゆえALS嘱託殺人事件のようなことが起きる。2019年に京都で2人の医師の介助によって、ALSという難病の女性が介助自殺を選択した事件。2人の医師は殺人罪で起訴されている。
実はこの事件に、著者も関わっていたそう。スイスに書類を申請する際、メディカルレポートが必要になる。だけど通常の医師は病院の倫理規定に抵触するということで書類を書いてくれない。それで著者がネットで知り合ったのが起訴されている2人の医師。彼らに書類を書いてもらえたことで、スイスでの安楽死が可能となった。
そして京都で亡くなった女性にこの2人の医師を紹介したのは、なんとこの本の著者だったとのこと。でも内容を読めば、あの事件を殺人事件として扱うことに強烈な違和感を覚える。その女性はスイスに行きたくても、24時間継続して痰を除去することが必要で渡航できない。苦しみを抱えたまま死を迎えるのは、間も無くという段階だったとのこと。
だけど日本では「死ぬ権利」が得られない。それゆえ殺人事件ということになってしまった。この裁判によって日本医療の現状が明らかになればいいなと思う。だけどおそらく難しいだろう。殺人事件だけで終わってしまうような気がする。
医療とは何か、について問いかけてくる素晴らしい書籍だった。大勢の人に読んで欲しい思う。
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