SOLA TODAY Vol.320
ブラック労働の職種は数あれど、ボクたちの生活に身近なものがある。
それはマンションの管理人という仕事。我が家のマンションは170世帯だけれど、1人の管理人さんが日々奮闘されている。朝から夕方までびっちり仕事をして、土曜日だって出勤。夏に神戸の三宮で花火大会があれば、開放される屋上テラスの開け閉めのために夜も出てこられる。
仕事が大変なだけじゃなく、人間関係でも苦労されるだろう。大勢の人と接していてれば、気が合う人もあれば、そうでない人もある。ちょっとした誤解が元で、雇い主の管理会社に告げ口されることもあると想像する。本当に大変な仕事だ。
そんな管理人に関する興味深い記事を読んだ。
いま日本中で急増している「マンション管理人失踪」という異常事態
なんとも恐ろしいタイトルの記事。まるでミステリーだよね。だけど失踪といっても事件性のあるものじゃなく、あまりにブラックな労働のために、すぐに辞めてしまう人が増えているという記事。
この記事で取り上げられているマンションは埼玉県にある築40年の物件。管理会社を通じて管理人として派遣された女性が定年を迎えたとき、あまりにいい人なので管理組合が直接契約して働いてもらっていた。
ところが年齢が70代になったその女性は、身体がきついので退職させてほしいと言ってきた。必死で慰留したけれど、今年の3月末で退職。すぐに代わりの人が見つからないので、なんとか管理組合で自主管理を始めたらしい。
ところがいきなり自治体からゴミ処理に関して、『収集拒否』という通告を受ける。この自治体は分別が厳しく、今までは管理人の女性が明らかにヤバいゴミ袋は開けて、再度分別し直してくれていたらしい。だから収集してもらえていた。
続いて起きたのは、ゴミの放置問題。エレベーターのないマンションなので、足の悪い住人のゴミは管理人さんが収集場まで運んでくれていたらしい。ところが彼女がいなくなってから、その住人がベランダにゴミを溜め込むようになり、隣の住人と言い争いになったとのこと。
さらに風の強い日にヒビが入った窓ガラスは放置され、管理人がいなくなってから外壁にスプレーで書かれた落書きがそのままになっている。これではまずいと思って必死になって新しい管理人を募集した。ところがまったく応募者がない。
週3回の時短勤務で、時給換算にすると950円ほど。本当はもっと出したいけれど、管理費の徴収が少ないマンションなので、これ以上は出せない。ようやく決まったと思ったら、たった二週間で連絡が取れなくなった。
かなり特殊な例にように思えるが、ボクはそうでもないと考えている。新しいマンションは予算を決めて管理会社と交渉しているから、ある程度のレベルの管理人を派遣してもらえるだろう。だけど管理会社でも管理人のなり手を集めるのに苦労しているらしく、経営状態も芳しくない。
もし管理費の増額を拒否すれば、この記事のような状態になってしまうのは目に見えている。ブラック労働と言われるゆえんは、労働に見合った報酬が出されていないからだ。ちゃんとした給料を提示できるのなら、管理組合としても有能な人材を確保することができるはず。
人間というものは不思議なもので、一定以上の数が集まると、必ずと言っていいほどルールを守らない人間が出てくる。それを放置すると、集合住宅は見る間に荒れていく。
わかりやすいのはワンルームマンションの賃貸物件。住宅が自分の財産だという概念がないので、やりたい放題になっている物件がある。管理が行き届いていないと、ゴミ収集場なんて悲惨なことになっている。人間のモラルなんて、まったくあてにならないということ。
賃貸物件の場合はオーナーの気持ち次第だけれど、分譲マンションに関しては住人の意識改革でいい方向に変えていけるはず。まず意識するべきことは、出すものは出すということ。管理費や修繕積立金が少ないマンションだと言って、住人が喜んでいるようじゃダメ。
自分たちの住環境を快適に維持していくためには、それ相応の負担が必要になることを認識するべき。そうでないと管理会社や管理人へ、住民の意向は伝わらないし、受け入れてもらえないだろう。こんな給料で働いていられるかよ!、というの本音だと思う。
ブラック労働をなくすためには、自分たちが無意識にそのことに加担していないか省みるべきなのかもね。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。