タブーに踏み込む困難
どんな出来事も、真実はひとつしかない。けれども、知られてはいけない事実というものが存在する。日本史や世界史でも、ときの権力者によってある種の真実は巧妙に隠されている。歴史とはそういうものだろう。
これは現代社会でも同じで、決して明かされない事実というものがあるはず。たとえばアメリカの911テロに関しても、いまだにアメリカ政府の陰謀説が消えていない。それは真実をありのままに開示していないからだと思う。つまり陰謀説に注意をそらせて、世間の目から隠したい『何か』があるのかもしれない。
そんなタブーとされる出来事の真実を追求するのに、映画や小説が使われることがある。フィクションだと言い張ることで、そのなかに真実を散りばめようとする手法。だけどそれだって限界がある。出来事の歴史が浅いほど、タブーを死守しようとする存在が動く。そんなことを勝手に感じてしまった映画を観た。
『グリーン・ゾーン』という2010年のアメリカ映画。2003年に起きたイラク戦争をテーマにした作品。写真のマット・デイモンが主演している。
イラク戦争のきっかけはよく知られている。イラクのフセイン大統領が大量破壊兵器を隠しているとして、それを理由にアメリカ軍が軍事行動を起こした。ところがどこを探しても大量破壊兵器が出てこない。だからこれに関しては、陰謀悦も含めて様々な憶測が飛び交った。
映画もこの疑惑をテーマにしていて、物語のスタートはなかなか鋭い切り口で緊張感のあるものだった。マット・デイモン演じるロイ・ミラーは大量破壊兵器を見つけ出すMET隊の隊長。ところがガセネタばかりで、どこに行っても兵器が見つからない。命を張って現場で活動しているのに、手にしている情報がデマではないかと疑いだす。
そんなミラーにCIAの中東責任者が接触してきた。国防省の担当者が大量破壊兵器の情報を手にしている。情報元は謎の人物で、その責任者はそれが誰なのかを明かさない。それでCIAに協力することを約束したミラーが、真相に近づいていくとう物語。
結論として情報元はイラクのバース党の将軍だった。だけど彼は国防省の担当者に大量破壊兵器の計画は中止して、まったく存在していないと正直に告げた。なのにその担当者は兵器があるとマスコミに嘘の情報を流し、結果として戦争のきっかけを捏造した。
それで口封じのためにその将軍とミラーを殺そうとする。途中まで謎の真相に迫る勢いだったけれど、映画の後半になってミラーと国防省のケンカが中心になってしまった。アクション映画としてはかなり面白いし、映像も迫力があった。だけどどうにも尻つぼみになった感がある。だって事実はもっと複雑で、深い闇があるように感じるから。
映画の結末は、どちらかといえばリベラル派が主張しそうな展開に終始して、共和党政権批判で終わったような印象だった。それが意図的だったのか、監督の凡ミスなのか、あるいは権力者から不当な圧力がかかったのかどうかはわからない。
とにかくまだ日の浅いイラク戦争に関して、タブーに踏み込もうとしたけれど途中で失速したような雰囲気だったなぁ。でもマット・デイモンがメチャかっこいいので、ついそんなことを忘れてしまうwww
そういう意味では、キャスト勝利の映画かもしれないね。
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