固定観念の殻の破り方
ロックといえば英語。これはボクのなかで揺るぎないものになっている。どれだけ頑張っても、日本語はロックのリズムに乗り切れない。だからワンオクロックだって英語の歌詞を採用しているんだと思う。ところがここ数ヶ月、異質な言葉のロックをよく耳にした。でもどこの国の言葉なのかわからない。
そのうちUKチャートにもトップ10入りしてきた。気になってチェックしてみると、マネスキンというイタリアのロックバンドだった。つまり聞き取れなかったのはイタリア語だった。このバンドがいいんだよね。
過去にアバやセリーヌ・ディオンが優勝したユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2021で優勝した。それで勢いがついて、一気に欧米の音楽シーンに飛び込んできた。ということでボクもさっそくこのバンドのアルバムを聴いてみた。
『Teatro D’ira: Vol.I』という今月の2日にリリースされたアルバム。まだ1度しか聴いていないけれど、ロック好きのボクのハートを完全に射抜いてしまった。メンバーは4人で平均年齢が20歳という若いバンド。このアルバムの1曲目がミュージックビデオになっているのでリンクしておこう。
とにかくめちゃカッコいい。紅一点で女性ベーシストがいるので、男ばかりのむさ苦しさがなくていい。タイトルは「ジッティ・エ・ブオーニ」という曲。どんな歌詞なのかわからない。でも数日前に日本語字幕つきのビデオがリリースされていた。こりゃハマりそうだなぁ。
ロックは英語というボクの固定観念の殻を破ってくれたマネスキン。イタリア語のロックもいいね。
そんな固定観念の殻を破ることの難しさ、そして大切さを教えてもらえた小説を読んだ。これまた最高に面白い物語だった
2021年 読書#66
『へぼ侍』坂上泉 著という小説。著者の最新作となる『インビジブル』という小説に感動したので、彼のデビュー作を読んだ。幕末の武士を題材にした物語なので、幕末オタクのボクには完全にストライクの小説だった。
まだ新しい小説なのでネタバレはしない。主人公の志方錬一郎は大阪で生まれ育った幕末の与力の長男。父は鳥羽伏見の戦いで薩長と戦って戦死している。明治になって武士の志方家を再興させたい気持ちはあったけれど、錬一郎は薬屋に丁稚奉公をしていた。
だけど明治10年に西南戦争が起きる。まだ民兵の訓練が行き届いていない明治政府は、元武士という限定で薩摩兵と戦う人員を募集した。錬一郎は薬屋から暇をもらい、その招集に応募する。戦争経験が必要というのに、知恵を働かすことで17歳というギリギリの年齢で部隊に潜り込むことに成功する。
ところがいきなり分隊長を任命される。その部下たちが実にいいキャラ。元姫路藩の武士だった三木、幕末に五稜郭で官軍と戦った経験がある松岡、そして公家付きの武士だった沢良木。それぞれに思惑があって、この部隊に参加している。
ところが生粋の武士は誰もいない。つまり誰もが『へぼ侍』ということ。彼らには武家社会という強い固定観念があり、武士として一旗あげることを願っている。だけど恐ろしい戦場の現実を経験するに至って、やがてその固定観念が崩れていく。もはや武士は消えていくしかない時代だったから。
とにかく西南戦争後のそれぞれの未来が本当に楽しい。特に主人公の錬一郎は、西南戦争を通じて歴史に名を残す人物と知り合いになっている。まだ若い乃木大将だったり、柔道の始祖である嘉納治五郎、まだ新聞記者だった犬養毅、錬一郎に取材した新聞記者時代の井上靖、知り合いになった手塚軍医は手塚治虫の曽祖父、そしてなんとラスト近くでは西南戦争中に敵の大将である西郷隆盛とも会っている、
こうした人物たちと出会うことで、錬一郎は武士という固定観念を超えた新しい人生に到達している。最終章では彼が老人となった未来も見ることができる。最初から最後までワクワクしながら読み進めることのできる物語だった。これって映画化したら楽しいだろうなぁ。
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