コロナ禍特有のホラー作品
昨日、1970年代にアメリカで起きた心霊事件のドキュメントをテレビで見た。映画にもなった有名な幽霊屋敷の話。6人もの人間が銃で惨殺されたあと、その豪邸を買った人が経験した恐怖体験をもとにした内容。
単なるオカルト番組ではなく、事実を検証していく姿勢に好感を持てた。番組の内容は置いておいて、ホラーというものが時勢を反映しているということに関心をもった。その当時はアメリカで宗教離れの傾向が強く、大勢の人がどことなく不安を抱えていた。
だから悪魔が出るという屋敷を話題にすることで、多くの人が悪魔の存在を信じようとした。悪魔を容認するということは、神を信じることにつながるから。だからこの時代に『エクソシスト』を代表とするホラー作品に人気が出たとの分析だった。
さて、現代はどうだろう? 以前に比べて日本では心霊番組が激減している。ただコロナ禍によって、人々は常に不安とストレスにさらされている。それは日本だけでなく、海外でも同じだろう。ということでコロナ禍特有のホラー作品が作られている。
2020年 映画#128
『ズーム 見えない参加者』(原題:Host)という2020年のイギリス映画。まったく期待しないで観たけれど、想像していたより面白かった。時間も短いので、飽きることなく楽しめた。zoomをホラーのアイテムとして使うという、まさに時勢を反映したホラー作品だった。
ストーリーはめちゃめちゃシンプル。イギリスがロックダウンされているころで、外出することができない。だからzoomを使って友人たちは交流していた。ある日、友人の一人が霊能者と知り合った。それでzoomを使った交霊会をすることになった。
誰もが自宅で退屈している。だから冗談半分で参加している人が多かった。ちょっと騒いで楽しもうという雰囲気。だけど主催者の女性と、霊能者の女性は冗談半分で交霊会に参加してはいけないと諭す。霊に対して敬意を表すること。それを強く強調していた。
なのにアジア系の女性が、幽霊が現れたと嘘をついた。その直後、交霊会を仕切っていた霊能者とのzoom接続が途絶えた。そして参加者たちに恐怖が訪れる。次々とそれぞれの家で心霊現象が起き、結果として参加者の全員が殺されてしまうという内容。
ただ怖がらせるだけの内容なので、悪霊の正体などは明かされない。とにかく霊に対するリスペクトを欠いたことで、全員が報いを受けたという設定になっている。短い作品で、かつ知らない俳優さんばかり。そしてzoomの映像を多用しているので、ノンフィクションのような印象だった。
だから作り込んだ雰囲気をあまり感じなくて、なかなか面白かった。zoomで幽霊が現れるなんて、いましかできないホラー作品かも。そして映画の最後にちょっとした特典映像がある。
本編のリハーサルを兼ねて、監督等を含めて出演者たちが参加した交霊会が本当に行われた。もちろんzoomを使って。作品と関係ないリハーサルなのに、次々と不思議な現象が起きる。霊能者と連絡が取れなくなるのは本編と同じ。
映画では嘘をついた役のアジア系女性が、恐ろしい体験をして本気で泣いていた。映画作品としてこのリハーサル映像を付け加えるかどうか、議論が分かれるところだと思う。興醒めする人もあると思うから。だけどボクとしては、演技を離れた俳優たちの恐怖が垣間見れてよかったかも。
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