人間は、事実を知るほど謙虚になる
今日からゴールデンウィークの後半戦。我が家のマンションのおとなりは、午前5時ころから楽しそうにお出かけされた。テンションが高いのはわかるけれど、もう少し静かに出かけられないものかね。
ボクはいつもどおり、いやいつも以上、仕事に集中。おまけに今日は36時間断食で楽しみが少ない。せめて昨日撮影した写真で、春を満喫しよう!
ちょっとアップすぎて、異様な雰囲気かな? でも綺麗だなぁ。
さて、人間は事実を知らないと横着になる。まだ京都にいるころ、妻とふたりで滋賀県のとある町営温泉に行った。ガイドブックにはシャンプーや石鹸が常備されているとのこと。
ところが方針が変わり、シャンプー等は持ち込みになっていた。ところがボクは近視。お風呂に入ると、そんな張り紙が見えない。ガイドブックを信じているから、シャンプーが温泉に常備されていると完全に信じている。
だから手近にあったシャンプーとボディソープを、ふんだんに使って満足してお風呂を出た。それも新品で、ボクが封を開けた。ところが風呂の外で落ち合った妻が変なことを言う。
「お湯につかるだけだと気持ち悪いね」
そのとき、ようやくその張り紙の存在を知った。ボクは誰かが持ってきたものを、何も知らずに使っていたということ。きっとその人は驚いただろうなぁ。だって新品なのに、誰かが使ったのがまるわかりだからね。
知らないというのはある意味強いけれど、人の気持ちがわからず横着になる。人間というものは、事実を知れば知るほど自分の狭い了見を自覚して、謙虚になるものだと思う。そんなことを感じさせてもらえる映画を観た。
『半落ち』という2004年の日本映画。
以前から面白い作品だと聞かされていたけれど、どうも陰気な雰囲気がして観る気がしなかった。でも喰わず嫌いはいけないと思い、今日は初めて観た。
いや泣いた。めちゃ感動した! 素晴らしい映画だね。最近観た邦画では、ボクのなかでトップ3に入る作品。
映画の視点移動が実に素晴らしい。最初は刑事の視点で始まり、やがて検事に移行する。そこから新聞記者、さらに裁判官へと移る。そして最後には裁判所に一同が集結して、すべての事実が明らかにされる。
主役は元警部の梶を演じた寺尾聡さん。妻を殺して自首するが、彼には空白の2日間がある。犯行は自供しているが、その2日については黙秘を通している。それで『半落ち』というタイトルになっている。
警察幹部は警察官の犯罪を世間の話題にしないため、空白の2日間を捏造して起訴する。だけど取り調べをした刑事、検事、記者、そして裁判官がその矛盾に気がつく。そこには心をゆさぶる衝撃的な事実が隠されている。
何も知らない人間は勝手に騒ぎ立てる。だけど真実を少しずつ知る人間は、あまり語らなくなる。ただひたすら謙虚になり、なんとかして主人公を救おうとする。映画を観ている側はその秘密が気になるから、画面にクギ付けになってしまう。
出演している俳優さんの演技が、あまりにもすごすぎる。言葉にならないほど素晴らしい。特に樹木希林さんの演技には、涙が止まらなかった。日本の俳優さん、マジですごいよ!
ラスト近くでうれしかったのは、まだ青年の雰囲気が残る高橋一生さんの登場。今年の大河ドラマの『おんな城主 直虎』で小野政次を演じている彼を見て、うまい俳優さんだと思っていた。
『耳をすませば』というアニメの天沢聖司の声役のイメージが強かったけれど、大河ドラマの演技を見て俳優として注目していた。そんな高橋さんの若い姿を見られて、ラッキーだったなぁ。やっぱりいい雰囲気を持っている。
とにかくいい映画だった。原作が直木賞受賞に関して大もめになったのは知っていたけれど、まだ読んだことがない。気になるのでぜひ読んでみよう。
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