SOLA TODAY Vol.444
ボクがサラリーマン時代、職場に内緒で副業をしていた。税理士事務所や印刷会社に勤めているときは、会社のパソコンとソフトを使って、父親の会社の経理処理や法人税の申告書を作っていた。
報酬としてもらうと税理士法違反になるので、父の会社からは非正規社員の給料として出してもらっていた。どうせ勤めている会社の年末調整や社会保険の手続きはボクがやっているので、会社にバレない。あとは年明けに所得税の確定申告をするだけでいい。
祇園の芸舞妓事務所で働いているときも、副業をしていた。お茶屋さんは法人化している大きな店をのぞいて、年配の女将さんが個人で営業しているのがほとんど。だから事業所得の確定申告が必要になる。だから日曜日にお茶屋さんまで出向いて、丸1日領収書の束と格闘しながら申告書を作っていた。
そんなお茶屋さんが数軒あって、これは完全な税理士法違反だけれど、ご祝儀という名目でお金をもらっていた。あとは舞子さんになりたいと言ってくる中学生を、置屋さんに紹介することがある。最終的に紹介した女性の採用が決まれば、事務所に内緒でご祝儀をもらっていた。これもある意味副業だよね。
社会的な常識として、副業は禁止されていた時代。だからおおっぴらにできることではなかった。それは終身雇用という制度が確立していたから。だけど時代は大きな変化を迎えている。
政府が年度内に副業解禁へ:長時間労働不安、社会保険はどうなる
ソフトバンクやDeNAという大手のIT企業が、副業解禁を今年になって発表している。少子化で働き手が少なくなってきた日本において、社員を自分たちの組織だけにしばりつけようとすると、かえって会社から逃げ出してしまう。
ある程度副業を認める自由度を持たせることで、貴重な人材を手元に置いておきたいということだろう。さらにその社員が外で経験を積むことで、会社に還元してくれるだろという思惑もある。
でもまだ8割以上の企業が副業を禁止している。その原因となっているのが政府が発表している『就業規則モデル』。そこに副業の禁止がうたわれているから、多くの企業が疑いもなく従っている。だから政府としては、新しい『就業規則モデル』で副業解禁を明示する意向とのこと。
そんな時代だということだよね。とてもいいことだと思う。もちろん問題はいろいろ出てくるだろう。本業をおろそかにされては困るし、企業の情報が漏洩するおそれもある。あるいは雇用保険等の社会保険をどうするのか、という問題もある。
でもこうした流れは加速する一方だろう。だからこそ、働く側にも意識改革が求められている。どこかの組織に所属して安定した生活をするなんて、単なる妄想に過ぎないことを自覚するべき。ボクとしては、すべてのサラリーマンが個人事業主になればいいと思う。
雇用契約ではなく、請負契約にすればいい。企業の立場にすれば、アウトソーシングだよね。実力のある人ならば複数の会社と契約できるだろう。逆に仕事ができない人は、切り捨てられていく。でも副業を認めてもらうということは、それくらいのリスクを負う覚悟が必要だと思う。
企業としても有能な人材を確保できるし、どうしても手離したくなければ会社の役員として迎えればいい。雇用関係ではなく経営者のひとりとして迎え入れたら、組織に属することも容認してもらえるのじゃないかな?
時代の流れとして、副業は普通になっていくように思う。結局は企業も働き手も、自らの付加価値を高めていくしかないということだろうね。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。