枠を超えた音楽が起こす奇跡
人間というのはどんなことでも枠にはめるのが大好き。誰かが成功した方法、あるいはたまたまやったことがうまくいった場合、その枠組みから抜けられなくなることが多い。
形にこだわることで、結果的に自分の首を絞めている。特に自由な発想を要求される音楽や絵画でそんな状況になると、暗いトンネルから永遠に抜け出せないような気分になってしまう。
NHKの連ドラ『スカーレット』でヒロインの川原喜美子の夫である八郎は、いままさにそのトンネルに閉じ込められている。まだ今週分は見ていないけれど、しばらくそんな状況が続きそうだものね。
やっぱり芸術は自由であることが基本。そんなことを思い出させてくれる素晴らしい映画を観た。
『はじまりのうた』(原題: Begin Again)という2013年のアメリカ映画。制作年度は2013年になっているけれど、アメリカで公開されたのは2014年。それもたった5館の映画館で限定公開された作品だった。
ところがあっという間に口コミが広がり、1300の映画館で公開された大ヒット作となった。日本でいえば『カメラと止めるな!』と同じだね。だからこの映画が日本で公開されたのは2015年になってからだった。
ボクはまったく知らない作品だったけれど、キーラ・ナイトレイの歌が聴ける、そして彼女の恋人役として人気バンドであるマルーン5のアダム・レヴィーンが出演しいるということを知って、それだけでも見る価値があると思った。
そんな程度の動機だったのに、あまりに素晴らしい作品なのでめちゃお得な気分になれた。アダム・レヴィーンはゲス男の役だったけれどねwww
主人公はキーラ・ナイトレイ演じるグレタ。そしてもう一人の主人公は音楽プロデューサーのダン。このダンという複雑な人物の役を、マーク・ラファロが見事に演じていた。
ストーリーはシンプル。恋人と一緒に音楽をやってきたグレタは、その恋人がバカ売れしたことで捨てられる。それで母国のイギリスに戻ろうとした前夜、たまたまライブハウスで自分の曲を歌った。
そのとき偶然、音楽プロデューサーのダンが見ていた。彼もドン底状態で、自分が創立したレコード会社をクビになったばかり。だけどグレタの才能に心を動かされ、彼女を世に送り出そうとする。
その戦略が素晴らしい。自分が創立したレコード会社にグレタを認めさせるため、ニューヨークの街中で曲を録音して、なんとアルバムにしてしまった。予算がないからバンドのメンバーは寄せ集め。それでもマーケティングという枠組みから自由であり、純粋に音楽を楽しんでいるメンバーたちが集まった。
そのなかには妻と別居中であるダンにとって最愛の娘のバイオレットもいた。そんな枠を超えた音楽が奇跡を起こす物語。それがどんな奇跡なのかは、ぜひ映画を観て欲しい。注意するのは必ずエンドロールまで観ること。奇跡はそこで起こっているからね。
その奇跡は、まさにこの映画の公開方法と同じ性質のもの。そこまで言っちゃうとネタバレかなぁ。
キーラ・ナイトレイはメチャメチャ可愛かったし、歌が上手いのに驚いた。どうやら本人が歌っているらしい。そしてアダム・レヴィーンの歌声も相変わらず最高だった。ダンの娘役を演じたヘイリー・スタインフェルドもキュートだったよなぁ。
あっ、そうそう。そういえばヘイリー・スタインフェルドは新曲が出たところ。先日にその曲のミュージックビデオも公開されている。この映画を紹介できたので、ついでに彼女の新曲もリンクしておこう。『Wrong Direction』というタイトル。
本当に心が温まる素敵な映画だった。音楽を愛する人にオススメの作品だよ。
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