文化の壁の向こうにあるもの
中東情勢が緊迫している。今月の3日、イラクの首都であるバクダッドの国際空港近くで、ある車列がアメリカ軍の攻撃を受けて死者が出た。アメリカが標的にしていたのはイランのソレイマニ司令官。
目的を果たしたアメリカ政府は、イランによるアメリカ人への攻撃を防ぐための作戦だったと述べている。当然ながらイランは報復を示唆していて、アメリカ政府はイラク国内からアメリカ人の国外退去を指示している。
すでに3500人のアメリカ兵が中東に派遣されたというニュースも飛び込んできた。石油価格は高騰して、経済的にも大きな影響が出そう。さらに中東への自衛隊派遣を閣議決定したばかりの日本にとっても無視できない状況になってきた。本格的な戦争にならないことを願うしかない。
『アルゴ』という映画を観た人なら、アメリカとイランが犬猿の仲だとわかるだろう。両国の確執の歴史は長く、そして複雑。同じ人間なのに、なぜここまで憎み合うのだろう。その理由として、文化のちがいが大きな影響を与えているのは事実。
アメリカとイスラム圏の文化のちがいを、とてもわかりやすく描いている映画がある。初めて観たけれど、とても素敵な作品だった。
『王様のためのホログラム』(原題:A Hologram for the King)という2016年のアメリカ映画。サウジアラビアが舞台となったコメディ映画で、アメリカとイスラム文化のちがいをリアルに感じられる作品。トム・ハンクスが主演している。
トム・ハンクス演じるアランは、人生のどん底だった。大手自転車メーカーの取締役だったけれど、業績悪化の責任を追求されて解任。さらに負債を抱えていて家も車も没収されただけでなく、妻にまで逃げられた。大学に通っている娘を愛しているが、学費の工面もままならない。
そんなアランが再就職したのがIT企業。サウジアラビアの王子と知り合いということが効いて、営業マンとして採用される。といってもあるパーティーのトイレで一緒になっただけなんだけれどねwww
そんなアランが商談を成立させるためにサウジアラビアに派遣される。プレゼン相手はサウジアラビア国王。だけど文化や習慣のちがいによって、とてつもない苦労をすることになる。おまけに背中に腫瘍ができたことで、病院に通うはめになってしまう。
そこで知り合ったのが女医のザーラ。商談のストレスによるパニック障害に陥ったアランを救ってくれたのがザーラだった。映画としては恋愛コメディ作品かな。この二人の恋愛が映画の核となる。
だけど本当のテーマは、両国の文化のちがいだと思う。あらゆる場面で笑いつつも、日本人のボクたちでさえ驚くような習慣や決まりごとにアランは翻弄される。だけどアランは、この国でようやく人生のどん底から抜け出す。
それはザーラとの恋愛によって、文化の壁の向こうにあるものを体験したからだと思う。育った環境はちがっても、同じ人間であることに変わりはない。アランはそのことを知って、ようやく本来の自分を取り戻すという物語。
現実世界はこんなにうまくいかないだろう。アメリカとイランの緊張状態は簡単には解消しないと思う。もし両国が歩み寄ろうとするのなら、互いの文化の壁の向こうにあるものを認め合うしかない。う〜ん、映画とちがって現実は厳しいよねぇ、
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