SOLA TODAY Vol.184
ボクたちの年代の感覚でいうと、写真というものは保存することを前提にしている。
それは記録であり、記憶でもある。どんな家にもアルバムが何冊もあり、家族の歴史が残されている。
でもボクは全てのアルバムを処分した。卒業アルバムさえ一冊も残していない。それは過去を振り返るということを、あまり心地よいと感じなくなったからだろう。
スマホで写真を撮影しても、大抵2日後には消去している。ボクのスマホに保存されているのは、プロフィール用の写真だけだ。
そんなボクでも、写真は保存するもの、という概念はまだ残っている。その証拠に、パソコンで撮影した写真を保存しているから。
だから世間でSnapchatというアプリが流行り出したころ、なぜ若い人たちが利用するのか理解できなかった。アップしても自動的に消えてしまうというアプリだ。保存しないのに、写真を撮ってネットに流す意味がわからなかった。
ところがこの記事を読んで、ようやくその意味がわかった!
Snapchatで「写真を撮ってシェアする」ことで、私たちは本当は何をしているのか?
Snapchatの創業者であるエヴァン・スピーゲルは、まだ26歳ながらすでに億万長者。このアプリで大きな財産を築いた。そのエヴァンがSnapchatの流行を説明するのに、友人の言葉を引用している。
「なぜ子どもたちが大量の写真を撮りまくるのか理解できない。撮っても見きれないくらいの数の写真を撮っている」
子どもたちは写真を保存するために撮っているのではない、とエヴァンは友人のセリフを受けてそう言っている。
だったら何のため?
「子どもたちにとっての写真は会話なのだ」とエヴァン。
なるほど! Snapchatを利用する人は、写真を保存するためでなく会話としてとらえている。言葉は話せばすぐに消えるものだから、それと同じ感覚。
写真をアップすることで自分の想いを伝え、また友人がその返答を写真で送る。ようやく消える画像のアプリが流行する意味が理解できた。
スマホの普及がその傾向を加速させたらしい。パソコンが主流の時代は、保存することが当たり前の感覚だった。ところが持ち歩けるスマホが普及することで、写真は言葉と同じ意味を持つようになった。エヴァンの言葉を引用してみよう。
『スマートフォンが「その瞬間に表現する(instant expression)」というアイデアを強化した。それは今現在アナタがどこにいて、何を感じているか、をその瞬間にシェアするというものだ。これはアイデンティティと結びつくので非常に重要だ。というのも、アイデンティティはソーシャルメディアの核となっているものの一つだからだ。
「ためていく」という考えの下ではアイデンティティとは「私がこれまでしたすべてのこと」によって形成されていたが、「その瞬間に表現する」というアイデアはその定義を「私が今この瞬間に誰であるか」へと変えてしまった』
この言葉は、物理的なアルバムを手放したボクならよくわかる。写真は『過去』を残すものから、『今』を表現するものに変化しているのだ!
過去から今への移行は、これからも進むような気がする。そしてそうあるべきだ、とボクも思う。
ただしSnapchatがこれからも流行するかどうかは、かなり微妙だよね。
Facebookが買収しようとして、Snapchatは拒否した。つまり大物を敵に回してしまったということ。Facebookは明らかに、Snapchatをつぶしにかかっている。
Facebookの傘下にあるInstagramが追加した機能である『ストーリー』は、まさにSnapchatと同じ。投稿した動画が24時間後に自動消去される。ボクがフォローしているレディーガガも、その『ストーリー』をよく利用している。
写真や動画が、『今』を表現する手段に移行するのはまちがいないと思う。だからこそ競合は激しくなる。これからのSnapchatは大変かもね。
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