SOLA TODAY Vol.495
どのような業界でも、クレーマーはいる。何かケチをつけたくなるのは、今の時代になって始まったことではなく、人間が本来持っている性のようなものだろう。
ただネットというものが浸透したことで、そのクレーマーの声が過剰に拡大されてしまう。たった1人のクレーマーのつぶやきが、便乗する人たちによって拡散される。それゆえ企業等は腫れ物に触るようにクレーマーと接することになり、かなり神経質な対応を取るようになった。
特に公務員や公的な仕事をしている人のバッシングが絶えない。去年も消防団の人たちが食事をしていたことにクレームがついて、大騒ぎになったことがある。その傾向は今でも続いているようだけれど、大阪市がそんなクレーマーに毅然とした態度を見せた。
「救急隊員が自販機で飲み物を購入」市民のクレームに「理解を」
昨年の11月、患者を病院に搬送し終えた救急隊員が付近の自販機で飲み物を購入し、救急車内で飲んでいた。それを見た市民が、勤務中のこうした行動は不適切だとクレームをつけた。ちょっと前なら炎上したような出来事だろう。
ところが大阪市はその質問に対して、このように答えている。
「当時の状況として、救急車内での血液付着が多く、その拭取りと消毒に労力と時間を要した。それゆえ次の出場に備え水分補給を行う必要があった」
さらに、
「当局では、必要に応じ活動中の水分補給を適宜行うよう周知しているところであり、今回の場合、飲料水の購入はやむを得なかったものと考えます。救急隊は、連続出場や長時間にわたり活動する場合もございますので、ご理解を賜りますよう、よろしくお願いいたします」との回答。
いいね、大阪市!
ホームページでこのやり取りを見た大阪市民からは、当局の対応を支持する声が圧倒的だったらしい。ボクもそう思う。
普通の会社の事務員だって、勤務中にお茶やコーヒーを飲むはず。ましてや過酷な肉体労働を課せられている救急隊員が、仕事を終えて水分補給することなんて当たり前。クレームをつける人の頭の構造が、どこか歪んでいるとしか思えない。
どんな行為に対しても、反対する意見や揶揄する言葉は出てくるもの。そのひとつひとつに神経質になり、同じような状況でも、「今後このようなことがないよう指導します」というコメントを出す自治体がこれまでは多かったはず。
だけど今回の大阪市のように、正しいと判断されることについては、堂々と主張するべきだと思う。市民の声に耳を傾けることは大切だけれど、明らかに否定できることまで謝罪する必要はない。とても素晴らしい対応だと思う。
大阪市といえば、吉村市長が慰安婦像の設置に抗議して、サンフランシスコ市との姉妹都市を解消した。その行動に対して賛否両論はあると思うけれど、うやむやにしないではっきりと意思表示したことは、とても素晴らしいと思う。
若い市長がそういう態度を見せることで、市の職員たちにもそうした意識が育っているように思う。クレームに対して真摯に対応しつつも、否定すべきものについては明確に意思表示するべき。企業もこうした姿勢を見習って欲しいと思う記事だった。
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