太秦ライムライト
今日は正月の2日だけれど、ボクはすっかり日常モードで過ごしている。お昼ご飯にお雑煮と、正月用食材の残り、そして半分残った日本酒を飲み干してお正月モードは終了。午前も午後も、みっちりと仕事をした。
今日は出かけるつもりだったけれど、思ったより食材が残っていたので食べ尽くすことにした。ということで明日は4日ぶりにマンションの敷地から出るという引きこもり状態w
さて2017年の最後に観た映画は『超高速!参勤交代 リターンズ』という時代劇だった。せっかく時代劇で締めたので、スタートも時代劇で始めることにした。でも本当の時代劇ではなく、時代劇をリスペクトした素晴らしい作品を観た。
『太秦ライムライト』という2014年の日本映画。
福本清三さんという俳優さんをご存知だろうか? この写真で木刀を構えている男性。40代以上の人なら、名前を知らなくても顔を見たことある人は多いはず。数々の時代劇で『斬られ役』をつとめてこられた大部屋の俳優さん。
いろいろな出来事が重なって、この福本さんが注目されるようになった。その結果、俳優生活で初めて主演をされたという作品。その福本さんの功績を称えるかのように、松方弘樹さん等の大物俳優や、中島貞夫さんという映画監督が脇役として出演している。
タイトルにあるとおり、京都の太秦が物語の舞台になっている。時代劇全盛時代は過去のものとなり、現在の太秦は「日本のハリウッド」と呼ばれた面影を失っている。時代に取り残されつつある太秦の大部屋俳優が、今の映画界にキラッと光る何かを残すという素敵な物語。
ブレイクした若い女性俳優との対比を描くことで、時代劇の魅力と素晴らしさが映画の全編に渡って盛り込まれている。孤独と時代に見捨てられた苦悩を抱えた主人公が、なんとかして若い世代に自分が得てきたものを伝えようとする。その純粋で真摯な想いに、感動の涙なしで観ることのできない映画だった。
外国の映画賞で最優秀作品賞を取っている。当然だろうと思える、素晴らしい内容だった。1年のスタートに観る映画としては最高だったと思う。
ボクは京都市の山科という東の端で育ったので、西の端の太秦とはかなり距離がある。でも太秦はボクにとって思い出深い場所なんだよね。
中学生のころにロックバンドを組んだ。他の中学校のメンバーとの混成グループだったので、練習場所は太秦の貸しスタジを使っていた。撮影所に近い大映通り近くのスタジオなので、中学生のころはなんども通っていた。
そして今朝のブログでも書いたけれど、社会人になって初めて働いた父親が経営する会社は太秦にあった。だから山科から毎日太秦まで通勤していた。さらに妻は太秦と同じ右京区の嵯峨出身で、太秦の撮影所があるあたりは徒歩圏内にある。だからボクにとって、太秦はかなり縁の深い場所。
その太秦の空気を、中学生のころから肌で感じている。だからこの映画全体に流れている時代の香りを実感することができた。時代劇は衰退してしまったけれど、消滅することはないと確信している。
これは時代小説も同じ。例えば現代ドラマや小説で、固定電話やガラケーを使っていると、今見たら古臭く感じる。だけど時代小説や時代劇は、すでに象徴化された時代のものを使っているから、ある意味永遠に古臭くなることがない。だからいつまでも物語として構築できる高いポテンシャルを持っていると思う。
もう一度時代劇が復活して、京都の太秦に光が当たるといいなぁ。そんなことを感じさせてもらえる映画だった。かなりオススメだよ!
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