過去となって見える現在
今日から9月となって、朝から学校へ通う子供たちの声で賑やかだった。ただデルタ株の感染が若い世代にも拡大しているので、いつ学級閉鎖等になるかわからない。二学期の開始とともに、子供たちへの感染拡大が起きないことを願っている。
そんな不安いっぱいの9月だけれど、世界的に見れば日本は平和そのもの。アフガニスタンの9月は、平和とはほど遠い状況だろう。少しでも現状を知ろうと思って様々な報道をチェックしている。だけど断片的な情報しか見えてこない。
リンク先の記事もそんな情報のひとつ。アメリカ軍は8月末という約束の期限どおりに撤退したという報道。そしてタリバンが空港を管理下に置いたという事実を伝えている。だけどアフガニスタンの実情はわからない。
アフガニスタンの『現在』がわかるのは、それが『過去』となってからだろう。歴史的な出来事がリアルタイムで明らかになることは少ない。断片的な事実がばらまかれるだけで、真実は権力者によって徹底的に隠蔽される。それが歴史というもの。
その法則を当てはめれば、この20年間の『過去』についてはデータとして提供されている。911テロのあとアメリカ軍がタリバンと戦ったことで、死亡した民間人は4万人を超えている。戦死したアメリカ軍兵士は2461人だけれど、数日前にカブール空港近くの自爆テロで命を落とした兵士の数が含まれているかはわからない。
タリバンはメディアを利用することで、以前とはちがうことをアピールしている。それを真に受けて、日本のジャーナリストでもタリバンは普通のアフガニスタン人だと語っている人がいる。
その一方で、テレビ等のメディアでは報道されない情報も飛び交っている。タリバン政府に音楽は必要ないと、音楽家が処刑されたという情報があった。タリバンの兵士が民家に押し入り、女性に料理を出すように強要した。それを拒むと、その一家を皆殺しにしたという情報もある。
とにかく実際に何が起きているのかわからない。昨日の報道では、タリバン政府が外国にいるアフガニスタン人パイロットに帰国するよう呼びかけているらしい。現在のアフガニスタンには飛行機を操縦できる人がいないので、戻ってきたら優遇するとのこと。
同じように知識人にも帰国して、新しい国の建設に協力して欲しいと呼びかけている。これに関しては、知識人を集めて処刑するだろうと憶測されている。中国の文化大革命で起きたような、国家規模の粛清が発生している可能性は否定できない。
でも最初に書いたように、歴史的な出来事にリアルタイムで立ち会っているボクたちには真実が見えない。何年か経過して、ようやくこんなことが起きていたと知らされるのだろう。それはこれまでの歴史が証明している。
でもそれでは遅い。大勢の命が失われたあとだから。それゆえアフガンの駐日大使が必死になって支援を訴えている。今朝のNHKのネットニュースで報道されていた。
「アメリカはあまりにも早く撤退してしまった。このままアフガニスタンが国際社会から見捨てられれば、この20年で得たものをすべて失うことになる」
「過激派組織の脅威も迫り、アフガニスタンが不安定になれば地域だけでなく世界にとっても非常に危険だ。国際社会は人道支援を継続し、時間はかかっても新しい包括的な政府が発足し国が自立するまで、見守ってほしい」
と述べて、日本政府の支援を求めている。だけど日本政府はこの願いに応えられるとは思えない。菅首相は総裁選の不利を避けるため、9月中旬に衆議院解散をするつもり。コロナ対策の不備による支持率低下の挽回に死に物狂いになっている。そんな状況で、このアフガン駐日大使の言葉に対応できるとは思えない。
すべては手遅れになってしまい、『過去』となったアフガニスタンの『現在』を見せられるだけかもしれない。
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