深い、とても深い物語
全国的に日本列島は煮えたぎっているようです。神戸もかなり暑い。おそらくこの夏のトップ3にランクインする暑さでしょう。できる限り日陰を歩き、水分補給と休憩をこころがけて買い物に行ってきました。
でも家に帰ると涼しい。窓を開け放すと風が吹き抜けるので、高原にいるような心地よさです。今も涼しい風を感じながらブログを書いています。どこかの避暑地に行く必要は、今年に関してはなさそうです。散歩の途中でとても美しい姿を見せてもらいました。
すぐ逃げるかと慎重に近づきました。でも快く写真撮影に協力してくれた蝶です。
羽根も広げて見せてくれましたよ。自然が作り出すデザインは美しい。ありのままで完成している「美」ですね。こうして少し離れた場所で見せてもらえるだけで、とても幸せな気持ちになります。昆虫たちと会話できたら楽しいでしょうね。昆虫ではありませんが、猫や鼠が話をする小説を先ほど読了しました。
『夜の国のクーパー』伊坂幸太郎 著という本です。
伊坂さんにしては珍しく、この小説はファンタジーです。いきなりトムという、話せる猫が登場します。もちろん人間は彼が話せることを知りません。トムが暮らす国は、高い壁で囲まれた小さな国です。王がいます。ところが隣国である鉄国との戦争が続いていて、敗戦したところから物語が始まります。
猫のトムが語り手です。ただ伊坂さんらしく、語り手はコロコロ変わります。基本的にはその国の外の「私」という人物に、トムが自分の暮らす国の状況を説明することで物語が進行します。つまりその人間は、猫のトムと会話ができる唯一の人物です。
その国には不思議な言い伝えがあります。クーパーという杉の木の化け物が壁の外に住んでいるのです。杉の森がありますが、そのうちのいくつかが蛹になります。そして一体だけが蛹からかえって動き出し、人間を襲うそうです。
ただ蛹は毒を持っているので、動き出すまで待つ必要があります。動き出したクーパーをおびき出し、谷底に突き落とすために毎年3人の村人が選ばれます。ただし谷底にクーパーを突き落とす時、大量の液体が飛び散ります。その液体に触れた人間は透明人間になってしまいます。死ぬことはありませんが、姿が見えなくなってしまいます。
そしていつの日か壁にかこまれた国が窮地に立った時、その透明になった「クーパーの兵士」が助けにきてくれる、と信じられていました。そしてついに、その危機が訪れたのです。鉄国の兵士が占領するために壁の内側に侵入して、王を殺してしまいます。そして住民たちを蹂躙しようとしていました。
こんな雰囲気で話が進みます。ちょっと最初は退屈に感じるかもしれません。ところが最後まで読むと、びっくり仰天します。伊坂さんの物語は驚くことが多いのですが、これはそのなかでもベスト3に入るでしょう。もし読んでみようと思う方がいたらつまらないので、なぜ驚くのかは書きませんね。
ファンタジーなのですが、実はとても深い物語です。ある意味、スピリチュアル的な要素が強い内容です。
変化することへの恐れ。
他人の言動を鵜呑みにして、自分で考えることを放棄することの無意味さ。
過去の不要な概念を手放すことで、見えてくる新しい世界。
こういったことが、住人と鉄国の兵士との関係。そして猫と鼠とのやり取りを通じて描かれていきます。さらにクーパーの伝説が加わることで、その深みが増していきます。完成までに2年半近くかけられた、という大作ですから、著者の思い入れの深さが物語に反映されているのでしょう。ハッピーエンドを楽しみながら、心の奥深くに何かが残される物語です。猫の特性もよく書かれていますよ。ファンタジー好きの方にはお勧めです。物語のラストで思い切り驚いてくださいね〜!
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