SOLA TODAY Vol.134
世界的にAirbnbが認知されるようになって、かなりの時間が経過しました。日本では民泊に関する規制があるので遅れていましたが、地域によっては規制緩和が進んています。だからこれからホストも利用者も拡大していくでしょう。東京オリンピックも近いですからね。
ところがその一方で、トラブルも起きています。需要と供給をつなぐことだけを目的にしたマッチングシステムにとって、この先検討していかなければいけない課題だと強く感じる記事を読みました。
「私の父はAirbnbに殺された!」急成長サービスの“死角”を被害者の息子が暴く!
家族でテキサスのコテージを借りた家族。気に入った理由は魅力的な庭のブランコでした。しかし写真は綺麗に映されていますが、実際は手入れがされず放置されたままのブランコで、この記事を書いた著者の父親が折れた木の幹で頭部を負傷して亡くなりました。
この事実を公表することにした著者ですが、世界に拡大しているこの企業が適切な対応を取ってくれるとは思えませんでした。なぜなら調査することでその実態が明らかになってきたからです。
企業の発展の陰で、多くの事故やトラブル、火災等が起きています。ところが最終的に部屋を提供するホストに対して補償をしても、利用者に対しては動こうとしません。それはAirbnbというシステムが持っている構造ゆえです。だからこそ、世界的に広がったと言えます。
一般のホテルでは、厳しすぎるほどの安全基準が設けられています。ところが民泊の場合はホスト任せです。Airbnbとしてはホストと利用者をつなげることで利益を得ているわけですから、簡単に言えば『出会い系サイト』のようなものです。
もし会社が利用者の安全を保証しようとすれば、ホスト先の徹底的な調査が必要とされます。もちろん現在では安全基準を確認して申告させたり、ユーザーレビューによって宿の評価を書けるようにはしているそうです。しかし実際に現場に行って安全を確認するのではなく、ホスト任せという現状です。そうでなければコストがかかりすぎて、商売になりませんから。
2011年にサンフランシスコである事件が起きました。女性がホストの家ですが、借りていた人が家を破壊し、家財道具を盗み、室内の一部は燃やされたそうです。でもこの事件を受けて、最初Airbnbは謝罪をしただけでした。
ホストの女性は黙っていられず、ブログにアップしてこの事実を拡散しました。するとあわてた会社は、最終的に100万ドルの補償金を出しています。それをきっかけにして、24時間対応の窓口を設置しました。
でもそこまでやったのは、直接の顧客であるホストだったからです。実際の利用者であるゲストに対しては、そのような姿勢を見せていません。2015年に男性が民泊先で犬に噛まれたことに対しても、最初は完全に無視していました。ニューヨークタイムズが調査を始めたことで、ようやく重い腰を上げたという状況です。
日本でも民泊が解禁されると、こうしたトラブルが起きるかもしれません。利用者は外国人の方が多いですから、予想もしない出来事が起きる可能性があります。マッチングビジネスは便利でスタートアップしやすいシステムです。タクシーのUberなども同じ発想です。
でも安全管理とそれに関するリスクを、ホストに押し付けている現状には疑問を感じます。ホストは空き家や空室を利用して現金を得ることが目的です。そのことに関するプロではありません。でも利用するゲストにしてみれば、安心して眠ることができる場所でなければ困ります。
わたしはそれほど旅行はしませんし、もしするとしてもリゾートホテルが好きなのでAirbnbを利用することはまずないでしょう。空き部屋を確保して、ホストとして登録する気もまったくありません(笑) だからある意味、ちょっと距離を置いてこの記事を読みました。
だけどこのような実情を知ると、マッチングを提供している企業は安全管理についてもう一歩踏む込むべきだと感じました。東京オリンッピックの時期には、大勢の外国人が日本に訪れると思います。既存のホテルだけでは、まかないきれないでしょう。
日本の各地で民泊に関する規制が緩和されつつあるのは、そうした需要を見越したことだと思います。だとしたらなおさら、この記事のような出来事が起きないシステムが構築されることを願わざるをえません。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。