恐怖の仕掛人のスゴ技
いま書いている新作小説は、明日に初稿があがりそう。思っていたより分量が増えて、16万字ほどになった。ようやく明後日から、大好きな推敲に入ることができる。今回は調整する部分がかなりあるので、時間がかかるだろうな。
作品としてはホラーミステリーで、書いている自分でも気味の悪いシーンがある。妻に読んでもらうとき、『閲覧注意』を警告しておかないと。
だとしてもボクの恐怖描写なんか、まだまだかわいいもの。ホラー作家の大家であるスティーブン・キングの作品は、実の娘さんでさえ読まないほど怖い。
それがどの程度の怖さなのか。そのことを知りたい人には、ちょうどいい作品がある。
『ミスト』スティーブン・キング著という小説。
この作品は短編集という扱いになっていて、全部で5つの作品が収録されている。
『ほら、虎がいる』
『ジョウント』
『ノーナ』
『カインの末裔』
『霧』
という5つ。
最初の4作品は短編。だけど最後の『霧』は中編と言っていい作品で、この書籍の半分以上を占めている。
どの作品も怖いよ。『ノーナ』なんて狂気の世界に引き寄せられてしまう。『ほら、虎がいる』というのは、著者がまだ『キャリー』でブレイクする前に書いた作品なので、ファンにすれば貴重な小説だと思う。
なかでも最高なのは『霧』という作品。これは2007年に映画化されていて『ミスト』というタイトルで公開されている。それでこの本のタイトルは『ミスト』になったんだろう。
ボクは先に映画を観たので、原作を読むのは初めて。まず驚いたのは、映画が原作に限りなく忠実だったこと。一般的には映画化されると尺の関係もあって内容を変更されることが多い。だけどこの作品に関しては、ほぼ完璧に映像化されている。
原作では重要な意味を持つ二人の女性を、映画では一人の人物に統合している。それ以外は、原作が映画と同じだったのに感動した。
この『霧』という作品は巻末の解説にも書いてあったとおり、スティーブン・キングの初心者におススメの作品だと思う。なぜなら彼の恐怖のパターンが、完璧に仕掛けられているから、まさに恐怖の仕掛人という感じ。
突然の嵐によって軍事基地が破壊される。そこで極秘裏に研究されていたことにより『霧』が発生する。そこには異次元からやってきた怪物たちがひそんでいて、人間を次々と殺していく。
面白いのは、主人公たちがスーパーーに閉じ込められてしまうこと。閉鎖された空間で霧に囲まれ、想像を絶する生物に命を狙われる。これだけでも怖いのに、その恐怖がちょっとずつ提示されていく。その小出しの恐怖が妙に怖い。
最初の犠牲者は身体を切り裂かれる。怯えて脱出したいというグループに、主人公は洗濯用のロープをつけてもらう。どの程度まで無事にいけるか知りたかったから。ところがそのロープは、血まみれになって戻ってくる。
さらに怖いのは、恐怖で怯える人間を洗脳しようとする女性。占い師なんだけけれど、この霧が神の祟りだと騒ぎ始める。そして信者を少しつず集め、生け贄を捧げるように言い出す。最終的には主人公の幼い息子を犠牲にしようとする。そうした人間心理の恐怖もこの小説では描かれている。
とにかく恐怖のデパートのような作品なので、著者の初心者にはぴったりだと思う。映画と原作がちがうのはラスト。
映画は絶望しかない。どうにかスーパーを脱出した主人公たちは、車のガソリンが無くなって立ち往生する。そして悲劇が……。
だけど原作では、その一歩手前で終わっている。もしかしたら助かるかもしれない、という予感を残してくれている。できることならこの原作のほっとした感を体験したあとに映画を観ると効果的かも。より深い絶望感を味わえると思う。
そんなものいらんわ、と言われそうだけれどねwww
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