久しぶりの本格ミステリ
小説には様々なジャンルがある。いま紙の本で通読中の『指輪物語』シリーズは、典型的なファンタジー。ボクの大好物なジャンルのひとつ。もちろん『源氏物語』のような古典の恋愛物語も面白いし、SF小説も大好きなジャンル。歴史小説も定期的に読みたくなる。
小学生から中学生のころは、ちょっとしたブームもあって推理小説に凝っていた。だけどこのジャンルはなんとなく読む回数が減っている。事件ものと言っても、ハードボイルド系の作品のほうがボクとしては楽しめるから。
それゆえ推理小説のガチジャンルである本格ミステリの作品を久しく読んでいない。本格ミステリの代表といえば「密室殺人」になる。Kindleで見かけた作品が面白そうだったので、久しぶりに本格ミステリを読んでみた。
2023年 読書#3
『体育館の殺人』青崎有吾 著という小説。体育館という言葉でわかるように、物語の始まりは高校の旧体育館。事件が起きたのは放課後すぐのこと。放送部部長の少年が、何者かによって刺殺された。
場所は旧体育館の舞台。緞帳は降ろされていて、上手と下手にあるドアは鍵がかかっていた。密室となるのはこの空間。放課後のクラブ活動の生徒たちが遺体を発見したことで、学校は大騒ぎになる。
警察がやってきて最初に疑われたのは女子卓球部の部長。その部長を敬愛する卓球部員の柚乃が準主人公として、この物語を引っ張っていく。なぜなら彼女の兄は刑事で、この事件の捜査担当となったから。
部長の疑いを晴らしたい柚乃は、ある人物の推薦を受ける。強烈なアニメオタクで、学校に黙って校内で暮らしている裏染天馬という少年。でも頭脳は天才的で、本気になれば全ての教科で満点を取ってしまう。その裏染天馬が密室の謎を暴き、真犯人を明かしていく物語。
久しぶりに読んだ本格ミステリで、想像してたより面白くて最後まで楽しむことができた。密室トリックも巧妙だった。必死で頭を働かせていたけれど、なかなか答えを見つけられなかった。その手掛かりとなる情報が著者によって巧妙に出し入れされているので、つい騙されてしまった。
裏染天馬のキャラも完成されていて、シリーズ化されたのがわかる。本格ミステリとしては満点の作品だと思う。ただボク個人としては、微妙な部分もあった。というのは頭の体操になるのは事実で、読み物としては素晴らしいと思う。
だけどなんとなくスッキリしない。高校生が主人公だという部分が大きいのかも。殺人を犯した真犯人の動機は、放送部部長にカンニングの証拠を映像として撮影されていたから。必死で隠したいとは思う。だけどそれで刃物を用意して、刺し殺そうとなんて思うだろうか?
それ以外にも登場人物の背景が語られるけれど、事件の解明が中心となるので感情移入できない。だから読み終わってもカタルシスを感じることなく、あぁそうだったんだ、で終わってしまう。ボクが物語に求めているものとの差異を感じてしまったので、読後感がモヤモヤしたままだった。まぁこれは個人の好き嫌いなので、どうしようもない
と言ってボクにこんな作品が書けるかと言われたら、絶対に無理。密室トリックを考えているだけで、不眠症になってしまいそう。そういう意味では、ボクにとって縁の遠いジャンルなのかもしれないなぁ。
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