ワンパターンがダメとは限らない
映画や小説の感想を見ていると、ありがちなパターンでつまらないという意見を見かける。たしかに予定調和は物語を楽しむ意欲を削ぎ、ラストでがっかりすることはある。だけどワンパターンが絶対にダメとは限らない。
わかりやすい例で言えば『水戸黄門』のドラマ。敵が誰で、最終的にどうなるかはすぐにわかる。印籠の登場と同時に助さんと格さんの活躍、そして悪人が黄門さんにひれ伏するというラスト。子供のころでも、あの瞬間を楽しみで待っていた。
試しにある人物が水戸黄門を演じたとき、そのパターンをやめてみた。すると一気に不満が出て、視聴率が落ちたということがあった。ワンパターンを楽しみにするという人間心理は確実に存在すると思う。
今日観た映画も、そんなパターンどおりの作品だった。予定調和を嫌う人は、おそらく駄作だと判断するだろう。だけどすぐにパターンが読めたボクは、それがどのように演出されていくかを十分に楽しむことができた。
2023年 映画#3
『21ブリッジ』(原題:21 Bridges)という2019年のアメリカ映画。いわゆるアクション・スリラー、あるいはクライムサスペンスという作品で、主人公が陰謀を明らかにしていく物語。
退役軍人の二人が、あるワイナリーに忍び込んでコカインを盗み出そうとする。30キロほどのブツがあるとの情報。ところが侵入してみると、なんと300キロという大量のコカインがあった。さらに警察官がいきなり扉を開けるようにとノックしてきた。
パニックになった二人は、持てるだけのコカインを手にして脱走しようとする。ところが銃撃戦になって、8人の警官を殺してしまう。逃亡した二人を逮捕するためにやってきたのが主人公のアンドレ刑事。
この地域はニューヨーク市警の85分署の管轄。だから85分署の署長であるマッケナは、同じ85分署の麻薬班である女性刑事のバーンズをアンドレにつける。そうして二人の捜査が始まった。そのメンバーが写真の3人。
左端の署長のマッケナを演じているJ・K・シモンズを見るだけで、この映画のパターンがわかる。彼は捜査を指揮しながらも、実は陰謀の黒幕だと予測できる。ところが結論から言えば、マッケナだけでなく女性刑事のバーンズも仲間だった。というより85分署の警察官の多くが関わっている。
警察官たちはパトカーで麻薬を運ぶことで、多額の賄賂を受け取っていた。そのとき運悪く強盗が遭遇してしまった。だから犯人たちは汚職警官に殺されることが必然。陰謀の存在を感じたアンドレは、犯人をどうにか生きたまま逮捕しようとする。ところが犯人の二人は殺されてしまった。
だけどアンドレは諦めない。最終的には85分署の陰謀を暴くという結末。比較的新しい映画なのでその過程はネタバレしない。結末はわかっていても、真相にたどり着くまでは十分に楽しめた。この作品はワンパターンを楽しめる人でないとダメかもね。
ちなみにアンドレを演じたチャドウィック・ボーズマンは2020年に病気で亡くなっているんだね。ボクは知らなかった。『42〜世界を変えた男〜』という大リーグの選手を演じた作品で素敵な俳優さんだと思っていた。43歳で亡くなったらしい。亡くなる1年前に公開されたと思うと、不思議な気持ちになる作品だった。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。