家臣の命を左右する武将の意地
ボクが戦国時代オタクなのは、父が所有していた吉川英治さんの『新書太閤記』を小学生の頃から読んでいた影響だと思う。だけど20代の頃にある経験をしたことで、ますます戦国時代に興味を持つようになった。
20代の時にとてもリアルな明晰夢を見た。もしかしたらボクの過去生ではないかと思っている。過去生について語る人で多いのは、自分の過去生が著名人だったというもの。戦国時代に限定すれば、名のある武将が自分の過去生だと語る人が多い。
でもボクの場合は全くちがう。いわゆる足軽で、それもかなり下級の雑兵クラス。おそらく普段は農業で暮らしを立てていて、戦争が起きたことで駆り出されただけの人間だったと思う。だから名前さえわからない。
かなり広大な寺の境内ようなところに集まって、これから戦に行くという状況だった。今でもはっきり覚えているのは、まず誰と戦うのかわからないということ。周囲の仲間に聞いても首をひねるばかり。おそらく大将の意向が定まっていなかったのだろう。つまり優柔不断な武将の家臣だった。
でもその武将の名前は覚えていた。織田信長の次男で、織田信雄という人物。本能寺の変の後に安土城を焼いてしまったと言われるバカ殿として知られている。事実は定かではないけれどね。でも秀吉についたと思ったら、家康に頼み込んで秀吉に戦を仕掛けているという人物。
仲間うちの会話では、あんな優柔不断な大将にはついていけないという意見が多数。家臣に信頼されていなかったのかも。だからそのときのボクは、誰のために戦っているかもわからなかった。
でもあの時代、もしかしたら織田信雄のような優柔不断なほうが長生きできたのかも。あえて自分の意地を通す武将についている家臣は、そのために悲惨な最後を遂げていることが多い。昨日に読了した小説でも、そんな出来事が描かれていた。
2023年 読書#59
『徳川家康〔9〕碧雲の巻』山岡荘八 著という小説。『どうする家康』をより深く楽しむために、未読だったこの小説を通読している。全26巻のうちこれで9巻まで終わった。まだまだ先は長い。
先週のドラマは長篠の合戦の続きで、織田と徳川の連合軍に武田勝頼が敗れたところまで。いよいよこのあとは、家康に最大クラスの試練が待っている。正室の築山殿と嫡男の信康に関わること。
でも小説は先行していて、すでに織田信長は本能寺の変で命を落とし、謀反人の明智光秀も死んだ。この第9巻では織田家の後継者を決める「清洲会議」から始まる。今回は家康の登場はほんのわずか。ほとんどが羽柴秀吉の物語になっている。
「清洲会議」から柴田勝家を滅ぼした「賤ヶ岳の合戦」までが描かれていた。だから信長の妹であるお市の方も勝家と共に命を落としている。天下を狙う秀吉にとって、残すところ最大の邪魔者は家康というところまできた。
このラストの「賤ヶ岳の合戦」は本当に悲惨な戦いだった。どうしても秀吉の下風に立ちたくない柴田勝家としては戦うしかない。負けるとわかっていても、秀吉に戦を仕掛けるしかなかった。その意地のせいで、どれだけ多くの家臣たちが命を落とすことになったのか。
そのことを考えると、胸が痛なくなる内容だった。自分の意地を捨てて、天下のためにあっさり降参するばいい。勝家一人が腹を切れば、大勢の命を助けることができたはず。それができない武将についた家臣は、とにかく逃げるか、運命を共にするしかないのだろう。
この第9巻を読んで、20代の頃に見た強烈な明晰夢を思い出してしまった。勝家のような強い意地が存在しない織田信雄についたボクは、もしかしたら思ったより長生きしていたかもねwww
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