メチャ気になる Vol.79
Amazonは海外で電子書籍の定額読み放題をすでに始めています。そして間もなく日本でもサービスが開始されるようです。まだ不透明な部分も多いですが、どうやら講談社や小学館の大手版元が参加を表明しています。旧作の売れ筋商品から出していくようで、新作も検討されているとか。どちらにしても、日本の出版業会を大きく揺るがすことになるのは間違いありません。そして大変なのが書店です。こんな記事が掲載されていました。
書店「存亡の危機」、また本屋が消えていく 出版不況で生き残る条件とは何か
この記事を読むと、大手の書店でさえ経営状態が思わしくないことがわかります。東京駅の八重洲口に、八重洲ブックセンターという書店があります。関西にいる私でさえ名前を聞いたことのある有名な書店です。自社ビルなのでかろうじて経営を守ってきましたが、いよいよ大変な状況になってきたようです。取次大手のトーハンから49%の出資を受け、事実上の子会社になりました。そして2018年に付近の再開発の事情もあって、建物が解体されるそうです。
丸善とジュンク堂は大日本印刷の子会社。ブックファーストもトーハンの子会社となっています。それほど自力での経営が困難になっています。例えば丸善の場合、書籍の売り上げで言えば3億円強の営業赤字です。ではどうして利益を出しているのか?
大学の図書館等の運営を援助する、図書館サポートでようやく利益を出しているそうです。それに付随して、大学や研究機関むけの洋書や学術書の販売で利益を出しています。通常の書店営業では食べていけないのです。
紀伊国屋書店でも通常の書店営業はトントンの利益を出すのがが精一杯。やはり学術誌販売でようやく補填している状態です。新宿の店舗では6階の洋書売り場だけを残して、1〜5階は8月に閉鎖されます。その場所は家具チェーンのニトリが入るそうです。
大手の書店ですらこんな状態ですから、中小の書店がどれほど大変かは想像できます。全国の書店は2015年で約13,400店。2000年に比べて約8,000店も減っています。そういう私も本屋に通うことが減りました。どうしても必要な本はAmazonで購入します。その方が確実に手に入るからです。書店を散策して、未知の本と出会うことがなくなってきました。
これは再販制度と委託販売という、書籍の流通構造が崩壊してきた証拠です。Amazonがそうした古い体質にくさびを打ち込んだ結果となりました。売れなければ返品すればいい、という書店の経営方法が成り立たないということです。取次から押し付けられた商品を並べて、それが売れずに返品しているだけになっています。
書店が生き残っていくためには、書店独自の販売戦略を明確に打ち出していくしかないように思います。取次に頼らず、版元と直接にやり取りすることが増えてくるかもしれません。旧式の販売形式にとらわれている書店は、淘汰されていくでしょう。
大変なのは書店だけではありません。先日幻冬舎の社長である見城さんが、755というアプリでコメントされていました。本が売れていないことは自覚しているけれども、最新のデータを見て絶望的になるほど売れていないことを改めて認識されておられて、そのことを嘆かれていました。
それは書き手も同じでしょう。本当に売れるものを書いていかなければ、淘汰されていきます。間もなく始まるAmazonの定額読み放題が、今後の出版業会の行方を左右することになると思っています。私たちは時代の大きな変化を目の当たりにしているのかもしれません。
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