SOLA TODAY Vol.156
イノベーションをもたらすものは何か?
いろいろな要因を見つけることはできるだろうけれど、誰もが認めているものがある。それが軍事研究。
ボクたちの生活に欠かせないPCやスマホは、軍事目的で研究されてきた技術が応用されている。宇宙ロケットだって、本来の目的はミサイルだというのは厳然たる事実。
そんな軍事研究に対して、法政大学がコメントを発表している。
2015年から防衛省が実施している、安全保障技術研究推進制度というものがある。2017年度の予算は100億円に達していて、研究費の確保に苦労している大学の研究機関にとってはありがたい制度のはず。
ところが法政大学は、「応募は当分の間は認めない」と発表した。その理由として田中総長が以下のようにコメントを出している。
「戦争を目的とした武器等の研究・開発は、本学が使命とする持続可能な地球社会の構築の対極にあり、関与するのは、本学の存立基盤をゆるがすことになる」
正論だとは思う。私学にとって独自の思想を主張することは大切だから、意義あることかもしれない。
けれども軍事研究から離れることで、法政大学は他の大学に遅れをとることはまちがいない。
その理由として、最初に書いたようにイノベーションが生まれるのは軍事研究が基盤となっていること。特にこれからの世界を変えていくような最新技術は、軍事研究を応用することで急速に発展すると思う。
もうひとつの理由は、『戦争を目的とした』という断定的な考え方。防衛省の基本理念としては、決して戦争を目的とした制度ではない。自国を防衛することに主眼が置かれているはず。
残念ながら、現代社会はいつ戦争が起きても不思議ではない状況。ドローンなどはあらゆる産業で利用されているが、あれだって無人の爆撃を目的にして開発された。そのような攻撃に対処するために、ドローンの仕組みを知らないことはかなりヤバい。
国として武器を持つのを避けることができる世界なら、知らない顔をしていてもいいだろう。でも悲しいかな、そうはいかない。それならば武器による脅威を取り除くために、武器を研究することは必要だと思う。「戦争を目的とした」という言葉に固執してしまうと、手も足も出せなくなってからあわててしまうことになりかねない。
軍事から逃げるのではなく、真剣に向き合う姿勢こそが研究機関の使命ではないだろうか。どのような技術も、戦争に使用することは可能だ。でもそれを戦争の道具にさせないためにも、科学者はそこから逃げるべきではないと思う。
戦争を起こすのも人ならば、戦争を防ぐのも人。どれだけ自分たちが平和だと主張しても、他国が攻撃しない理由にはならない。テロリストとは対話すれば分かり合えると言い切る人は、自分が平和を主張することで本当に助かると思っているのだろうか?
きっとそんな人は他国が日本に侵略してきても、憲法第9条をかざせば逃げていくだろう、と真剣に思っているのかもしれないなぁ。
まぁ、それぞれの大学が決めることだからどうでもいいのだけれど、この記事をみて気になったことを書いてみた。こんな発想が日本の大学の主流になってくると、優秀な科学者はどんどん海外に出てしまうと思う。すでにそうなりつつあるけれどね。
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