メディアの真の役割とは?
フェイクニュースという言葉が象徴するように、ネット社会ではデマが飛び交っている。一次情報をたしかめずに拡散されているものだけでなく、混乱を招くため、あるいは真実を隠すためにあえて流されているデマもある。
そんなデマを事実であるかのように、新聞に載せたりテレビで放送するメディアがある。新聞や放送局が偏向報道するのは、いまや当たり前だという認識になってしまった。
だけど本来のメディアに与えられた役割は、真実を報道するということのはず。
その真の役割にこだわり続けた、あるメディアの実話を映画化した作品を観た。
『記者たち 衝撃と恐怖の真実』(原題:Shock and Awe)という2017年のアメリ映画。アメリカで起きた911テロのあと、ブッシュ政権は2年後にイラクへと侵攻した。アルカイダと繋がっていて、イラク国内に大量破壊兵器を隠しているという理由。
だけど当時のメディアは、その理由が納得できなかった。これまでのアルカイダとイラクの関係から、両者が繋がっているとは考えられなかったから。だけどニューヨークタイムスをはじめとして、FOXやCNNという巨大メディアもそれが事実だとして報道する。
ただその流れに抵抗しているメディアがあった。ナイト・リッダーという地方紙の31紙の新聞に記事を配信する会社で、イラクの大量破壊兵器が嘘であることを確信していた。そしてその姿勢を最後まで崩さず、メディアとして真実の報道を続けた。この実話を映画化した作品。
ロブ・ライナーが監督として、そしてナイト・リッダーの責任者として出演している。そしてイラク疑惑が嘘だと見抜いた記者の二人を、ウディ・ハレルソンとジェームズ・マースデンが演じている。
ウディ・ハレルソンはボクの大好きな俳優。同じロブ・ライナーの監督作品で、暗殺されたケネディ大統領の後を引きついたジョンソン大統領の役がとても印象に残っている。
そしてジェームズ・マースデンといえば、『ヘアスプレー』でコーニー・コリンズ役が印象的。歌って踊れるだけじゃなく、記者役も素敵だったなぁ。さらにミラ・ジョボヴィッチやトミー・リー・ジョーンズたちが脇を支えていた。
この疑惑に関しては、数々の映画が作品にしている。つい最近もチェイニー副大統領を主人公にした作品を観たばかり。そういう意味では二番煎じなんだけれど、二人の記者役が素敵でとても素晴らしい映画だった。
大手のメディアは大統領を含めた政府高官から情報を得る。それゆえ政府がらみの陰謀に騙されやすい。ましてや仕事を失いたくないという気持ちもあるから、流れに身を任せてしまう。
ところがナイト・リッダーの記者たちは、現場の政府職員や兵士たちから時間をかけて情報を集める。それゆえより真実に近づくことができたのだろう。だとしても世間のバッシングに負けず、自分たちの報道を最後まで曲げなかった姿はすごい。
それに比べて大量破壊兵器が出てこなかったことで、ニューヨークタイムスは謝罪記事を出すはめになった。メディアの魂を売り渡してしまった結果だろう。
エンドロールで現実の二人が登場した。その素敵な笑顔に、報道陣としての矜持を強烈に感じた。世界のマスコミが見習うべきだと思う。
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