完全に騙された!
発達した低気圧が日本列島を通過したようで、北陸では強風で新幹線がしばらく止まっていましたね。東京でもかなりの雨と風だったようです。神戸は暗い時間帯に雨が降りましたが、朝にはほとんどあがっていました。そしてお昼前には青空が見えてきて、その後は雲ひとつない快晴です。
昨日の夜には暴風波浪警報が出ていました。でも風の音もあまり聞こえませんでしたし、今日は外を歩いてもそれほど風が強いとは感じませんでした。冬の季節風である六甲おろしのほうが、よっぽど強風です。
桜は終わりましたが、今は花水木が満開です。JRの六甲道周辺の住宅地には、震災の後に街が整備されて、街路樹として花水木が植えられている地域が多くあります。普段はあまり気がつきませんが、この季節になると通りの両側に白やピンクの花が咲き乱れて、その美しさに圧倒されます。この写真の花水木も、そんな通りに咲いている花です。
季節によって様々な花が咲きます。人間の記憶と花は、無意識の間にどこかで結びついているように思います。そしてそれは、人間同士の結びつきを象徴しているような気がします。そんなことを考えさせられる小説を昨晩に読了しました。
『花の鎖』湊かなえ 著という本です。
湊さんは、以前に『夜行観覧車』という小説を読んで好きになりました。その時も独特の世界観を持たれている方だと感じましたが、この物語でさらにその想いが強くなりました。それにしてもこの作品、最後の最後に驚く仕掛けがしてあります。そうした仕掛けに早く気づくのが得意な私ですが、あまりに巧妙に構成されているので、すぐに気づくことができませんでした。完全に騙されました〜〜!
物語の舞台は、アカシア商店街というものがある郊外の街です。特に名物があるわけではありませんが、「梅香堂」という和菓子屋で売っている「きんつば」は絶品です。さらに「山本生花店」という素敵な花屋さんもあります。
そんなアカシア商店街に出入りする3人の女性の一人称で綴られた物語です。全部で6章あり、各章で3つの物語が展開されるので、全部で18の物語になります。美雪、沙月、梨花という3人の女性が語り手です。
美雪は叔父が経営する会社で働くためにこの街にやってきます。そしてその会社で素敵な男性と出会って結婚します。なかなか子宝に恵まれませんが、優しい夫と幸せに暮らしています。
沙月はミスアカシアに選ばれるような美人。イラストレーターとして画集も出版しています。この街で絵画教室を開いて生計を立てています。
梨花は英会話学校の講師をしていましたが、会社が倒産。両親は早くに亡くしていて、祖母と二人暮らしです。でも祖母が入院することになり、失業中なのでその手術費用に困ります。そこで毎年亡くなった母宛に大量の花束を届けるKという謎の男性に、援助を申し入れようかどうか悩んでいます。
その3人に共通して出てくるのが、「梅香堂」と「山本生花店」です。同じ街に住んでいるから当然ですよね。ところが、ところが。章を追って読み進むうちにとんでもない展開になってきます。本当に驚きました。もしこの小説を読んでみたいと感じられた方は、この先を読まないでくださいね。
読んでいくと、3人の女性の距離感が少しずつ縮まるような気がします。それぞれに複雑な問題を抱えていて、ハラハラドキドキします。でも「花」がキーワードになって、いつかどこかで3人が繋がるような予感がします。しかしどのように繋がるのか、予想できません。
ところが第4章を読み終わる頃に、ようやく気づきました。
くそ〜、してやられた〜〜! と叫びたくなるくらい驚きました。そして3人のそれぞれの物語で謎だった部分が明らかになり、その繋がりが明確になります。同時に涙が止まりませんでした。
美雪、沙月、梨花。
梨花の立場から言えば、沙月は母であり、美雪は祖母です。3人の関係は、祖母、娘、孫だったのです。つまり同時進行していたと思い込んでいた物語は、それぞれ違う時代の物語だったのです。
美雪の夫は、自分の成果を他人に横取りされて失意のうちに事故で亡くなります。ところが美雪が妊娠していたことを知らずに亡くなりました。しかし、もし子供が生まれたらつけたい名前をメモに残していました。妻の美雪の名前の雪に注目して、『雪月花』の文字を入れることを望んでいたのです。ですから美雪の娘は沙月で、その娘は梨花でした。
美雪の夫の成果を横取りしたのは、美雪のいとこの男性です。そしてそのいとこの息子と沙月が絡んできます。そのことで謎だったKの正体もわかります。梨花が面倒を見ていた祖母は、当然ながら美雪です。
とにかく構成の素晴らしさに圧倒される物語です。そしてめちゃくちゃ感動しました。3人の女性の心を想うと、今でも涙が出てきそうです。これだけ手の込んだ小説を書こうと思うと、事前に完璧なプロットを組む必要がありますね。とても勉強になりました。
どうやら2013年にドラマ化されているようです。最近のドラマはTSUTAYAでレンタルされていますから、一度探してみようと思います。とても素晴らしい作品でした。
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