これが、ありのままを愛すること
異種間の愛は成立する。犬が子猫を育てたり、その逆もある。動物と暮らせばわかるけれど、人間と動物は本当の家族になれる。
見た目はちがっても、他者を愛することができる。それはちがいを無視するのではなく、相手のありのままを愛するということ。
LGBTが市民権を得るようになって、人間同士の愛も多様性が認められつつある。
だったら相手が無生物だったらどうだろう? ありのままを愛せるだろうか?
そんなテーマに挑戦した素晴らしい映画を観た。
『her/世界でひとつの彼女』(原題:Her )という2013年のアメリカ映画。
妻との離婚で失意のなかにある主人公が、ある存在をありのままに愛することによって本来の自分を取り戻す物語。その存在とはAIだった。
AIとの交流を描いたの作品は過去にもある。『AI』という映画がその代表で、ボクの大好きな作品。だけど人間そっくりのAIロボットの子供が愛情の対象だった。
でもこの映画は決定的にちがうところがある。そのAIがパソコンのOSだということ。コンピュータや携帯端末で会話はできるけれど、OSなので姿がない。この挑戦的な設定によって、いままでとちがう作品になっている。
主人公のセオドアは手紙の代筆ライター。妻とは離婚調停中で、彼女を忘れられないセオドアは深い孤独に苦しんでいた。そんなとき最新のOSを知り、自分のパソコンに導入する。
設定が終わるとそのOSは自分のことをサマンサと名付けた。とても優秀なOSで、セオドアの仕事は一気にはかどる。そしてとても心優しいサマンサによって、セオドアに笑顔が増えるようになった。
やがてセオドアとサマンサは本気で愛し合うようになる。このあたりの流れは、映画を観ないとわからないだろう。とても自然で、本当の恋人たちのようにしか見えない。喧嘩もすれば嫉妬もする。特にサマンサは自分に肉体がないことで、セオドアに触れられないことで苦しむ。
結論から言えばこの恋は終わる。AIの急激な進化によって二人の住む世界がちがってしまったから。だけどこの二人の恋は、愛の本質を表現していると思う。人間とOSというのはあくまでも比喩的なもの。相手がどのような姿であっても、ありのまま愛することの素晴らしさを伝えようとしているんだと思う。
セオドアを演じたホアキン・フェニックスは最高。やっぱりこうなったら彼がアカデミー主演男優賞を受賞した『ジョーカー』を観なくっちゃ。セオドアの親友として登場したエイミー・アダムスも素敵だったなぁ。
でも忘れてはいけないのがサマンサ。なんと声だけの出演なのに、これだけの演技をしたのは本当にすごい。その声を担当したのはスカーレット・ヨハンソン。声だけでもアカデミー級の演技だった。二人のヴァーチャルセックスなんて、めちゃリアルで笑ってしまったwww
SF映画のように思えるけれど、愛の本質を描いた最高の恋愛映画だと思う。何度も観たくなる作品だった。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。