100冊目は『おおあたり』
今年の読書目標は100冊。小説を中心としてじっくり読み込んでいるので、3日に1冊というペースで考えた数字。ところが思ったより冊数が増えて、このブログの読書記録でちょうど100冊目となった。
予定より早く進んだのは、電子書籍の読書を並行しているからだと思う。毎朝5時から5時半ころに目を覚まし、起床する6時半まで3冊の本を1章ずつ読んでいる。そのペースだと読了に2年近くかかる大長編が中心だけれど、普通の本も適時追加している。そのおかげで予定より早く100冊に到達した。
その結果、今年の記念すべき100冊目は『おおあたり』となった。といっても何かが当たったわけじゃなく、本のタイトルが『おおあたり』だった。でも縁起がいいよね!
2021年 読書#100
『おおあたり』畠中恵 著という小説。ずっと追いかけている『しゃばけ』シリーズの第15弾となる作品。巻を重ねるごとに登場人物が増えてくるので、読めば読むほど物語の世界が広がっていく。江戸時代の庶民の暮らしが学べるだけでなく、人間とはちがう妖(あやかし)たちの目線で人間社会を見ることができる。
今回も連続ドラマのような短編集で、全体に『おおあたり』というテーマになっている。江戸時代の『おおあたり』といえば富くじ。もちろんこの物語でも登場する。
ボクは初めて知ったことがある。当時は富くじに当選すると、近所の人たちを招待して飲食を提供する風習があったらしい。みんなで祝おうということだろう。だけどその金を目当てに人も寄ってくるから、いろいろと事件が起きただろうと思う。
『おおあたり』
『長崎屋の怪談』
『はてはて』
『あいしょう』
『暁を覚えず』
という5つの短編が収録されている。主人公は廻船問屋兼薬酒問屋を営んでいる長崎屋の若だんなである一太郎。彼の祖母は大妖という高貴な妖で、その血を引いた一太郎は妖たちを見ることができる。そんな一太郎を守っているのは、同じく妖の仁吉と佐助の二人。そしてレギュラー陣の妖も大活躍する。
今回もくすくす笑いつつも、ドキドキしたり、感動で涙したりと忙しかった。とにかくいつも泣かされる。この5作品でボクが最高に楽しんだのは『あいしょう』という作品。
長崎屋の手代である仁吉は白択、そして佐助は犬神という妖。二人はおぎんという一太郎の祖母に頼まれて、神の庭から人間の世界へとやってきた。『あいしょう』はこの二人が5歳の一太郎に初めて会ったときの物語。現在の一太郎は成人しているから、かなり以前のことになる。
いまでこそ『あうん』の仲である仁吉と佐助。だけど10歳の子供に化けて小僧として長崎屋にやってきたときは、互いに相手を心良く思っていなかった。だけど小僧として働き始めた初日に、一太郎の失踪事件が起きた。そのことがきっかけで、二人は無二の親友となっていく物語だった。
驚いたのは5歳の一太郎。彼が失踪したのは、使い込みを誤魔化そうとしたある店の人間が起こした誘拐事件が発端。妖を通じて自分と同じ年代の子供が殺されそうになるのを察知した一太郎が、その子を助けようとして失踪してしまう。
そんな一太郎を知って、仁吉も佐助も感動する。さすがおぎん様の孫だと思い、生涯を通して守り抜こうと決意する。いまは亡き一太郎の祖父も素敵な人だったなぁ。とにかくこの物語のファンには最高のエピソードだと思う。
ラストの『暁を覚えず』という物語も泣いた。病気がちで仕事ができない一太郎。父親がチャンスをくれても、すぐに寝込んで台無しにしてしまう。そんな一太郎が初めて父親の助けを借りずに、長崎屋の若だんなとして仕事を完遂する物語。心が温かくなる最高のストーリーだった。やっぱり100冊目は大当たりだったね。
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