復讐の炎を燃やし続ける方法
怒りのエネルギーはかなりすごい。ずいぶん前にそのことを痛感する経験をしたことがある。
まだ京都の祇園で妻と同じ職場にいた20年以上も前の出来事。帰り道に些細なことでケンカをした。それで怒り狂ったボクは、なんと祇園から向日市の自宅まで歩いて帰ったことがある。京都に地縁のある人なら、その移動距離にかなり驚くはず。京都市内をほぼ東西に横断するようなものだから。
要するに、怒りのエネルギーを相殺するためには、それほどの運動量が必要だということ。クタクタになることで、いつしか怒りの感情が昇華されている。これがもし他人に対する復讐心だったらどうだろう?
もし愛する人の命を奪われたとしたら、その復讐のエネルギーは凄まじいものだと思う。ただ個人差はあると思うけれど、そのエネルギーを何十年も同じレベルで保つことは難しい。ほとんどの人は、時間の経過とともにいつしか折り合いをつけていくことになるはず。心の奥底には熾火のような怒りは残るだろうけれど。
だけどもし、復讐の炎を燃やし続けるとしたら? そんなことをテーマにして映画を観た。
2021年 映画#157
『ブラッドショット』(原題:Bloodshot)という2020年のアメリカ映画。主演はヴィン・ディーゼル。ボクは彼の雰囲気が苦手で、この作品もずっと迷っていた。ただプロットに惹かれて観ることにした。思ったとおり、なかなかよく考えられた作品だった。
最初は普通のアクション映画っぽく始まる。海兵隊のレイは、人質救出作戦のリーダー。無事に人質の救出に成功する。ところがその組織が彼を恨み、レイと妻を拘束した。人質事件を密告した人間を吐かせようとした結果、レイの目の前で妻のジーナを殺してしまう。そしてレイにも銃を向けた。
気がついたレイはある研究所にいた。記憶を失っている。一度死んだ彼はこの研究施設に軍から検体された。そしてレイは無敵な改造人間として再生した。彼の血液にはナノロボットが寄生していて、銃で撃たれても即座に組織が回復する。さらにパンチでコンクリートの柱を破壊できるほどのパワーを有していた。
その研究所で過ごしていたある日、レイはふいに記憶を取り戻す。そして妻のジーナを殺した男を見つけ出して復讐した。ところが彼を迎えにきた研究所の仲間に、再び動けなくされて意識を失う。
ここでようやく真相が明らかになる。
レイと妻のジーナは、5年前に離婚していた。ジーナは再婚して子供もいる。だけど戦死したレイの肉体を改造することで、彼の復讐心を利用した殺人兵器として再生したというのが真相。つまり何度も同じ記憶を刻印される。ちがうのは暗殺のターゲットにしている犯人だけ。
意識を戻すたびに、彼はジーナの復讐のためにターゲットの人間を殺す。そのくり返しだった。尋常ではないレイの復讐心を利用することで、最強の殺人マシーンとして彼は利用されていた。
もちろんレイはそのことに気づく。そして彼を助ける仲間が登場してくる。その経過や結末に関しては、まだ新しい映画なのでネタバレをやめておこう。とにかくCGが素晴らしくて、2時間近い作品だけれどあっという間に時間が過ぎてしまった。
レイの改造に関して科学的に納得できない人や、あまりに強すぎるレイという人物にシラける人はつまらないかも。だけどそのあたりを許容できる人は、めちゃくちゃ面白い映画だと思う。続編がありそうな雰囲気もあるので、もし公開されたら是非とも観たいと思う作品だった。
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