同世代でも国境の壁は厚い
何だかぐっと冷え込みました。今日は歩いていても風が冷たかった。おまけに自宅に戻るお昼頃に雨に降られたので、帰りの坂道をゼーゼー言いながら登ってきました。本格的に雨が降りそうな夕方の神戸です。
それでも午前中はこんな可愛い三兄弟の花を見ながら、のんびり歩いていました。
せっかくの秋ですが、週末は雨の予報。15日の日曜日は神戸マラソンなので、できたら晴れて欲しかったです。海岸沿いを走るとても美しいコースですから、出場する人たちに気持ち良く走ってほしいですものね。地元のサンテレビで中継されるのかな? もしそうならテレビで観戦したいと思います。
神戸の美しさを堪能できるコースなので、本当は全国中継してほしいくらいです。車で走っても、電車で通過しても、うっとりするような景色ですから。少しでも雨が早くあがることを願っています。
さて、先ほど読了した本です。
『流』(りゅう)東山彰良 著という本です。
この表紙にご記憶のある方も多いでしょう。今年の直木賞に選ばれた作品です。心にしみる素晴らしい作品でした。私が個人的に感じるには、純文学として芥川賞候補でもいいのでは、と率直に感じるほど深い作品でした。
著者は台湾出身の方です。祖父は抗日戦争を経験された方で、第二次世界大戦後に蒋介石と共に台湾に移住された方のようです。9歳で日本に移住されていますから日本語は堪能ですが、この作品は台湾人でなければ書けなかった作品です。
まだ新しい作品なので、ネタバレはしません。主人公は著者と同じ境遇です。祖父は国民党に所属していましたが、共産党との戦いに敗れて台湾に移住した「外省人」と呼ばれている、1945年8月15日以降に中国大陸から台湾に移り住んだ人です。それ以前に移住していた人たちを「本省人」と呼ぶそうです。やはり両者は反目することがあったらしく、この小説を読むまでこうした言い方はをすることさえ知りませんでした。
本省人の方は日本統治時代を経験されているので、日本に対して親しみを持たれていたり、日本語が堪能だったりします。しかし外省人の人は戦争で日本軍に酷い目に遭わされています。その怒りと憎しみの矛先は、自分たちを台湾に追いやった中国共産主義にも向けられています。とても複雑な政治的背景があるわけです。
主人公の祖父がある日殺されます。その真犯人を探しながら、主人公が自分の中国人としてのルーツに向き合っていく作品です。誰もが生きることに必死で、殺しあっていた戦争時代。共産党につくか国民党につくかなんて、些細な分かれ道だったようです。でもそのことで村の全住人を殺戮するような事件が起きたりします。主人公のユーモラスな台湾での青春時代が描かれつつ、歴史の暗部に目が向けられていきます。
主人公は私より少し上の世代ですが、大まかに同世代と言っていいでしょう。共通する歴史的な事実を目撃しています。近い国ですから、日本のバブル景気なども影響しています。ところが同じ世代でありながら、心にあるものは全く違います。それを痛感させられました。世代の壁よりも、国境の壁の厚さを改めて認識させられた作品です。
決して日本人には書けない作品でしょう。登場人物が中国名なので馴染むまでに時間がかかります。でも読み進めていくと、主人公の青年の心の機微にどんどん引き込まれていきます。そして私と同じ世代を生きていたはずなのに、台湾の人にしか知ることのできない苦悩を知ることができます。とても勉強になった作品でした。
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