SOLA TODAY Vol.399
人間は自我が発達しているから、世界を絶対的な感覚でとらえている。つまり自分が見ているように、他人も同じ世界を見ていると思いがち。
でも知覚というものは相対的で、見ている存在によって感じている世界はちがう。ボクが赤色だと思っているものが、他人は別の色として記憶しているかもしれない。
ましてやそれが人間以外の生き物になると、その開きがさらに大きくなる。そんな感覚のちがいについて書かれた記事を読んだ。
若い世代にとっては、ピンとこないタイトルかもしれない。最近はハエを見なくなったからね。ボクが子供のころは『ハエ取り紙』なるものがあって、市場の鮮魚店等の店内に、粘っこくて細長い茶色の紙がぶら下がっていたものだ。食卓に置かれた食品をハエから保護する、折りたたみ式のネットのようなものもあった。
ハエは少なくなったけれど、蚊ならいるよね。ハエがイメージしづらいなら、蚊でもいい。とにかく彼ら昆虫を叩き落とそうとすると、かなり苦労する。もう少しで虫たちの身体に触れられると思ったとたん、スッとすり抜けていく。まるで人間をあざ笑っているかのような早業。
それにはちゃんと理由があった。
脳の画像処理速度を説明するものに「フリッカー融合頻度」というものがあるらしい。生物は周囲の世界を連続的な映像として見ているが、その処理速度が種によってちがう。小さな生き物ほど、その速度が速いとのこと。
人間が外界を認識する速度は1秒60コマ。1秒間という短い時間に、60の連続した映像として知覚している。ところが亀は1秒間に15コマしか認識しない。だから時計の秒針を見ても、亀にとっては人間が知覚しているよりも秒針が高速で動いているように見える。
ではハエはどうなのか?
なんとハエは1秒間に250コマの画像を認識している。彼らが時計の秒針を見たら、ちっとも進んでいないように感じる。つまりハエたちにとって、人間の動きはスローモーションにしか見えない。だから余裕を持って逃げられるということ。
めちゃ面白い! 同じ出来事が起きたとしても、生き物によって感じ方はちがうということ。ハエや蚊を殺そうとするとき、苦労するはずだ。時間感覚のちがう世界に住んでいるんだから。
これって、生き物の寿命とも相関関係があるような気がする。寿命が短い生き物ほど、「フリッカー融合頻度」は高い数値を示すのかな? ということは一緒に暮らしている猫とボクたち人間は、ちがう時間の世界で生きていることになる。
道理でミューナを捕まえようとすると、直前で逃げられるはず。あいつにしたら、人間なんてスローモーションで動いている生き物なんんだろうねw
もしかしたら同じ人間でも、「フリッカー融合頻度」に微妙なちがいが存在するのではないだろうか?
ボクはスーパー等に買い物に行くと、他人の動きがスローモーションに見えて仕方ない。どうしてもっと早く動けないのかと思うことが多い。もしかしたらボクの「フリッカー融合頻度」は、他人よりも高いのでは? ということはボクの寿命は短いのw
「それはあなたが、ただ単にせっかちなだけでしょう」という声が聞こえてきた。つまり関西弁で言うところの「イラチ」なだけなのかもね〜w
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。