SOLA TODAY Vol.669
ネット社会において最優先されるべきなのは、受け取る情報を疑ってかかるということ。
記事を鵜呑みにするのではなく、一度立ち止まって自分の頭で考えるべき。そして知識として脳に収めるとしても、『保留』というタグを付けておくほうがいい。そうしないと固定観念として居座ってしまうから。
耳障りはいいけれど、ちょっと待て、と感じる記事を読んだ。
タイトルを見たら、おぉ、信仰することによって長生きするんだ、とストレートに感じてしまう。この記事の著者がそう言っているのではなく、オハイオ州立大学で発表された論文を紹介している。
この研究によると、宗教を信仰することによって5〜7歳は長生きするという結果が出たらしい。ご利益でそうなった、とは言っていない。宗教に関わることで他人との接点ができる。そのことが寿命に大きく影響すると述べている。
『要するに長生きの秘訣は宗教そのものではなく、社会との接点が維持できるかが重要で、米国では宗教が個人と社会とを結ぶ重要な接点の役割を担っている』という結論らしい。
まぁ、無難な落としどころだろう。それなりに説得力はあると思う。だけど日本人であるボクは、こんな疑問を覚える。
「だったらなぜ、日本は長寿国なのか?」というもの。
日本にだって宗教はある。でもどうだろう? 外国諸国に比べて、日本人は明確な宗教観を持っている民族だと断言できるだろうか? 熱心な信仰を持っている人は、他国に比べてそれほど多くないはず。
宗教行事は大切にするとしても、仏教も神道もキリスト教もごちゃ混ぜになっている人がほとんど。自分の宗教はこれです、とはっきり言える人は少ないだろう。だから宗教が長寿に繋がると言われても、ピンとこない日本人は多いと思う。
人間の寿命に影響するのは、安定した経済であり、安心して暮らせる治安であり、適切な医療であり、科学に基づいた衛生管理であり、未来を支えていく教育だろう。宗教が大きな影響を持つとは思えない。
信仰によって救われた人や、宗教組織が運営する慈善活動で生きる希望を得た人は多いと思う。だけど人類の歴史において、宗教の名の下に大勢の人が命を落としている。助けられた人よりも、宗教によって地獄を見た人のほうが多いのではないだろうか?
キリスト教とイスラム教の対立は、もう2千年近くも続いている。テロリストの多くが、神の名を唱えて蛮行に及ぶ。政治は宗教を利用し、宗教も政治を利用してきた。南米の先住民たちは、布教という名目で虐殺されている。
今朝、死刑執行のニュースが駆け抜けている。オウム真理教教祖の死刑が執行されたとのこと。このニュースと彼らが起こした事件を思い出すと、「宗教は長生きの秘訣」という言葉に、精一杯の苦笑を送ることしかできない。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。