今日の言葉 9月8日
『記憶自体に、生命はない』
思考とはどういう意味でしょう? あなたはどのような時に考えますか? 言うまでもなく、思考とは神経的もしくは心理的反応、応答の産物であります。違いますか? 思考とは感覚に対する五感の直接の反応、もしくは蓄えられた記憶の反応である心理的なものです。記憶がなければ、何の思考も湧いてこないでしょう。ですから何らかの経験に対する記憶の反応が、思考プロセスを始動させているのです。
それでは記憶とは何なのでしょう? 自分自身の記憶と、自分がどのようにして記憶を蓄えているのかを観察してみれば、それが事実に基づいているもの、技術的なもの、情報や技術、数学や物理学に関連するものなどであるのか、それとも不完全で未完の経験の残留物であるのかの、いずれかであることが分かるでしょう。
一つの経験を終えた時、完了した時には、その経験に対する、心理的な残留物という意味での記憶は存在しません。残留物が残るのは、経験が充分に理解されない時だけです。そして私たちは過去に照らして、一つ一つの経験を眺めるので、経験に対する理解がありません。ですから私たちは決して新しきものに、新しきものとして出会わず、過去という衝立ごしに出会っているのです。という訳で、経験に対する私たちの反応は明らかに条件づけられており、常に限られているのです。
〜クリシュナムルティ著『四季の瞑想—クリシュナムルティの一日一話』より〜