守るべきものを見失う怖さ
昨日は連休初日の雑踏に紛れてモール街で遊んでいましたが、今日は全く正反対に自宅で引きこもっています。朝からの厚い雲が夕方になってようやく途切れてきました。明日は秋晴れになりそうな予感です。
昨日撮影した秋明菊です。JR神戸駅の地下広場で物産展のようなものが開かれていまして、地元の植物がたくさん販売されていました。あまりに可愛かったので写真を撮らせてもらいました。
自宅にこもっている今日のような日こそ、用事を片付けるのに最適です。朝の掃除の後と午後一番で、夏の名残を一掃することができました。私は昨日まで真夏と変わらない服装で歩いていましたからね。これで衣替えも完了です。
先日友人からLINEで連絡があり、今月末に高校の同窓会が予定されているとのこと。出席しないかと誘われたので、思い切って行くことにしました。高校卒業後に仲の良かった友人たちと会ったことはありますが、正式な同窓会に出席するのは初めてです。どちらかといえば、今まで積極的に参加したいと思っていませんでした。
なんせ私は波乱万丈な人生を過ごしています。大学を中退して京都を離れたり、転職を繰り返したり。ですから自分の過去を説明するのが面倒ですし、他人の過去にもさして興味がありません。だからずっと同窓会は敬遠していました。神戸に引っ越したので、当然通知も来ません。
でもさすがネット社会。友人を通じてそうした情報が簡単に舞い込んできます。今回は何となく「行け!」という直感を受け取ったので、正式な同窓会に初めて出席することにしました。同学年の人間がどれほどいるのかわかりませんが、とにかく京都まで出かける予定をしています。
さて、昨晩読了した本です。登場人物に強く感情移入すると、怒りマックスになる物語でした。
『赤い指』東野圭吾 著という本です。
私の大好きな「加賀恭一郎」シリーズの推理小説です。アトランダムに読んでいるので前後していますが、この作品から加賀の従兄弟である松宮という刑事がレギュラーとして登場します。その松宮と加賀の人間関係が初めて理解できた作品でした。いつもながら最高に面白かったです。
ただし、この作品は犯人とその共犯者に対して、途方もない怒りを感じます。家族を守るという大義名分を掲げながら、本当に大切なものを見失っているからです。結局は自分のエゴに振り回され、家族を守っている振りをしながら自分を守っているだけです。守るべきものを見失った人間の、愚かさと怖さを感じさせられた小説です。
14歳の息子が、自宅で7歳の少女を殺害してしまいます。少女にイタズラをしようとして抵抗されたからです。事実を知った母親は、夫に対して子供を守るように懇願します。どちからといえば命令ですが。夫は悩んだ末に少女の遺体を遺棄します。
この妻がとんでもない人間でして、この犯罪は息子を甘やかし、溺愛した結果起きたことです。さらに妻は同居している認知症の姑を人間扱いせず、精神的な虐待を繰り返していました。どうせ何を言っても姑はわからない、という理屈です。
そしてその夫も妻の言いなりで、自分の母親に対して冷たい態度を取るようになっていました。ですから息子の殺人に対しても、妻の言いなりだったのです。ところが加賀恭一郎は事件の核心に迫ってきます。夫婦はもう息子をかばえないと覚悟します。
そこで考えたのが、認知症の母親を犯人としてでっち上げることでした。まぁ、とんでもない二人です。自分の遺体遺棄に関しては罪を認め、息子を助けようとするのです。またその息子がとんでもない馬鹿野郎でして、とっとと警察に突き出すべきだと叫びたくなります。
ところが事件は加賀の活躍で解決します。ラストでとんでもない事実が明かされ、その夫婦は真実を自供することになります。
私はこの小説を読み始めて、半分も行かない段階でこのカラクリが読めました。と言うよりは、そうでなければこの小説は成立しないと確信しました。さすが東野さん。そのあたりは完璧でした。そのカラクリとは……。
姑の認知症が演技だということです。
つまり本当は認知症ではない実の母親の前で、夫とその妻は濡れ衣を着せる相談をしていたのです。なんとも恐ろしい物語です。読んでいて寒気を感じました。
最後に自らの過ちに気がつき、夫は自分の息子が犯人だと自供するのだけが救いです。そうでなければ、後味の悪い物語で終わってしまいます。そうした歪んだ家族の姿を描きながら、同時に加賀恭一郎とその父の確執も語られていきます。単なる推理小説ではなく、家族とは何かを正面から問いかけた作品です。加賀とその父が絡むラストは、とても感動的でウルウルしました。
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