庶民の視点で語る王国の闇
洋楽の新譜はことごとくチェックしている。オススメのアルバムをあげたらキリがないけれど、ボクにとって今年のベスト3に絶対入るという作品がある。
今年の4月にリリースされた、デミ・ロヴァートの『Dancing With The Devil…The Art of Starting Over』というアルバム。彼女の歌唱力の高さはいうまでもないけれど、とにかく収録されている曲が素晴らしい。タイトルナンバーでシングルカットされた曲はもちろん、アリアナ・グランデとのコラボ曲なんてあまりにすごくて鳥肌が立つほど。
そんななかでボクが最高に気に入っているのが『Melon Cake』というタイトルの曲。「誕生日にメロンケーキはもういらない」という不思議な歌詞で、メロディが本当に素敵。バラードでスタートするけれど、後半のサビでは踊りたくなるようなノリの良さ。
つい先日だけれど、妻の誕生日のケーキを買って自宅に戻るとき、この曲がiPhoneから流れてきて笑ってしまった。メロンケーキじゃなかったけれどね。あまりに素晴らしい曲なので、シングルカットしてミュージックビデオを作ってくれないかと願っていた。なんとその願いが叶ってしまった。
2日前になってこの曲のミュージックビデオが公開された。せっかくなのでブログにリンクしておこう。
さて、まったく雰囲気は変わるけれど、ボクが今年になってハマっているシリーズ小説のひとつを読了した。
2021年 読書#79
『十二国記 丕緒の鳥』小野不由美 著という小説。このシリーズの虜となっているボクは、時間があれば十二国記の世界に想いを馳せている。これまでの物語はすべて長編小説で、語り手となるのは王や女王、あるいは王を補佐する麒麟たちだった。
ところが今回は4つの作品を収めた短編集で、語り手は王政に影響を持たない下級役人や庶民となっている。それゆえ視点が変わることで、より深くこの世界のことが理解できる。4つの短編と主人公だけを紹介しておく。
『丕緒の鳥』:丕緒(慶国の文官)、景王 陽子
『落照の獄』:瑛庚(柳国の文官)
『青条の蘭』:標仲(雁国の文官)
『風信』:蓮花(慶国の荒民)
それぞれの物語について説明しようと思えば、余裕で4日はかかってしまうのでやめておく。ただこの世界特有の事象だけ述べておこう。
十二国記の世界では、国の役人になることで仙昇という特典を受ける。仙人になるようなもので、永遠に生きることができる。だから王によっては500年も同じ国を統治している。そしてこの物語に登場する最初の3人は、文官という政治に関与しない役人だけれども永遠の命が約束されている。
もちろん職を辞して庶民に戻れば死んでしまう。さらに永遠の命があるからといって、首をはねられたら生きていけない。病や老化から逃れるだけのこと。それゆえ見た目は若者でも、実は200歳だということもある。だからこそ、この物語は特殊な世界観を構築することができるのだろう。
ただ永遠に生きるからといって、幸せであるとは限らない。ここまで読んできた経過として、この世界は常に闇が存在している。王が統治する能力を失ってくると、国は傾いて犯罪が増える。妖魔という化け物が人間を襲うようになる。そして王の不在期間は、その国にとって地獄のような世界へと変貌してしまう。
この4つの物語は、主人公たちがそんな国の荒廃を感じつつ、懸命に生きようとしている姿を描いたもの。そして王たちも、同じ苦しみを常に抱えている。十二国記という壮大な物語が最終的にどうなるなのかわからない。ただ予感として、決して明るい未来が待っていないように感じる。
だからこそこのシリーズを読むことがやめららないのかも。登場人物たちの行く末が気になってしまうからね。さて、次はどんな物語が待っているんだろう?
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