大村あつしオフィシャルブログ

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　みなさんは、ＭＲという職業をご存知ですか。医師に、自社の薬を売る営業職のことです。病院にいると、時々薬が入ったダンボール持参のスーツ姿の人を見かけますね。彼らがＭＲなのですが、前に、こんな現場に出くわしたことがあります。

　医師が薬について質問をしたら、そのＭＲはここぞとばかりに説明を始めます。そのうち説明が脱線して、薬そのものよりも、医学の基礎に関してまで言及し始める。

もちろん、彼も自社の薬をその病院の処方薬として購入してもらうために必死なのでしょうが、その様子を見ていた私が、

「相手は医師なのに……。医師は、それくらいのことは承知の上で尋ねているのでは？」

と思ったそのとき、医師の怒声が響き渡りました。

　「そんなことは説明されなくてもわかってる！　私は医師だぞ！　なぜ私が医学の基礎を君に説教されなければならないんだ！」

　医師が怒るのも当然です。もしかしたら、そのＭＲの営業成績は芳しくなかったのかもしれません。

　以前、あるスポーツ選手が、「知ったかぶりをする記者が一番嫌いだ。選手に対する冒涜だし、そういう記者が書く記事にはいつもがっかりさせられる」と、インタビューでマスコミ嫌いになった経緯を語っていました。

　野球記者の場合であれば、当然ですが、野球のルールも知らないような素人では記者は務まりません。いえ、彼らはかなりの知識を持っているはずです。私ごときでも、子どもの頃から毎晩、野球中継を見ていれば、「なぜ、あのとき監督はピンチヒッターを送らなかったのだろう？」「なぜ、左バッターに対して右ピッチャーをぶつけたのだろう？」と、一層のこと自分に監督をやらせて欲しいとやきもきすることもあります。

　ただ、記者の仕事は、知っていても、あえてそれを疑問として尋ねて相手から真意を引き出すことで、論戦を挑むことではありません。どんなに知識があっても、記者はプロ野球の経験がないわけですから、超えてはいけない一線というのがあるのです。

　それを超えてしまうのは「聞き下手」だと思います。

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