地に落ちた、名簿利用のジャストシステム
約20年前、日本人のほぼ100%の人が使っていたワープロソフトは「一太郎」だった。
当時のことをご存じない方は、「そんな馬鹿な」と言いたくなるだろうが事実である。
今のように、「Word」を使っているパソコンユーザーなどどこにもいなかった。
それもそのはず。
Wordはそもそもが英文ワープロソフトで、当時のWordは、表も作成できなければ、罫線機能もなかった。
文書の見栄えを気にする日本人には当たり前の機能でも、欧米人には必要ないものであったからだ。
一方で、表計算ソフトはというと、これまたご存じない方が多いと思うが、「Lotus1-2-3」というソフトが大きなシェアを占めていた。
ところが、Windows95と同時発売でExcel95(Word95も)が発売されたことで状況が変わり始める。
ある意味、初めてインターネットに接続する機能を持った「歴史的なOS」であるWindows95は誰もが欲しい。
そして、インターネットを楽しみたい。
しかし、Windows95では、Lotus1-2-3が使えない。
しかも、Excelはマクロ言語に「VBA」を採用して、開発者の間でも人気が出始めていた。
ただ、Microsoftはこう考えた。
「今のExcelなら、Lotus1-2-3のシェアをひっくり返せるかもしれない。しかし、Wordは無理だ。一太郎には敵わない」
そこで、Microsoftは、Excelで表計算ソフトのシェアを独占するために、ジャストシステムにある提案を持ち掛けた。
それは、パソコンに、一太郎とExcelをバンドルして(プリインストールして)販売するというものである。
これならば、一太郎を使いたいユーザーは、必然的に、表計算ソフトはExcelを使うことになり、表計算ソフトのシェアをExcelで独占できることになる。
ところがである。
確かに当時は、まだLotus1-2-3のほうが勢いがあったとはいえ、空前のWindows95ブームの中、Office95(Excel95やWord95)も驚異的な伸びを見せていた。
もはや、誰の目にも、ExcelがLotus1-2-3を抜くのは確実であった。
にもかかわらず、ジャストシステムはなんと、Microsoftのオファーを断ってしまう。
その結果、プレインストールパソコンは2種類に分かれてしまう。
ExcelとWordがプレインストールされたパソコン。
Lotus1-2-3と一太郎がプレインストールされたパソコン。
表計算ソフトは、もはやExcelの伸びは止められない。
ところが、ジャストシステムは、「ユーザーが一太郎からWordに乗り換えるはずがない。今後、パソコンユーザーは一太郎とLotus1-2-3を使う」と判断した。
いや、厳密には、ジャストシステムは、猛烈にMicrosoftを嫌っており、「自分たちがExcelとWordのシェアをぶっ潰してやる」と息巻いた。
結果はみなさんご存じのとおり、Excelの人気はすさまじく、一緒にWordも付いてくるので、全員が一太郎からWordに乗り換えた。
もはや、IMEのATOKが細々と残っているくらいで、一太郎はこの世から姿を消した(一応、まだ販売はしているが)。
ジャストシステムの完敗である。
ちなみに、僕は、雑誌記事を拾ってこのブログを書いているわけではない。
僕も一応、「日本一のITライター」と呼ばれ、Microsoftの上層部とも、また、アメリカのMicrosoft本社のExcelの開発者とも懇意にしていた人間である。
上述の「Microsoft VS ジャストシステム」の話は、「Excelと一太郎をセット販売させて欲しい」と徳島に長期滞在してジャストシステムに交渉した、その担当者から直接聞いた話である。
こうした経緯もあって表舞台から姿を消したジャストシステムがモバイル端末を使った通信教育に乗り出したことは知っていたが、今回、ベネッセから流出した名簿をもとにDMを送りまくっていた事実が判明した。
今回の名簿は、件数といい、内容といい、簡単に入手できるものではない。
誰が考えても、相当な大手から流出した名簿であることは明々白々である。
当然だが、ジャストシステムは当時とは経営者も社風も違うが、「Microsoftが嫌い」という感情論でワープロソフトシェアを失ってしまった、そうした負の面は、どうやら引き継がれているようである。
しかも、ジャストシステムは、その名簿データを削除するとまで言い始めている。
もちろん、一番悪いのは、データを流出させたベネッセだが、僕には、ジャストシステムも目くそ鼻くそであるような気がしてならない。
いずれにしても、もし「一太郎+Excel」という組み合わせだったら、今頃、日本のすべてのパソコンユーザーが一太郎を使っていたわけである。
たった一つの判断ミスで、シェアを失ってしまう。
本当に経営とは難しいものである。
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