ガストンとの対話 Vol.20
ガストンさん、人生をマラソンで例える人がいます。私のような年齢ですと、確実に折り返し地点を過ぎていますね。今まで生きてきた年数以上に人生が存在しないと思うと、いろいろ考えることがあります。
「ふん、つまらぬ発想だな。お前さんが明日死ぬとしたら、もう20年以上も前に折り返し地点を過ぎていることになるぞ。20歳で死ぬ人間なら、10歳が折り返し地点になる」
そりゃ明日生きているかどうかわかりませんが、普通は平均寿命から考えるでしょう。
「その普通の発想がつまらぬと言っているのだよ。どうせなら人生の本当の転機について考えてみるべきではないかの?」
人生の本当の転機ですか? 自分のライフワークを見つけるというようなことですか?
「ライフワークなんてどうでもいい。お前さんは何のために生まれてきた? この世界へ何をしにきた?」
究極的には、「全てがひとつである」ことを思い出すためですね。
「そう。人間が赤ん坊のころは、限りなく自我が存在しない。かといって、それは全てをひとつとして認識しているわけではない。ただ無知な状態だ。それは悟りではない。まずは成長にともなって自分と他人という分離を確立していく。他人の人生と比較することで、全てから分離された自分を強固な存在として思い込む」
なるほど、そうして自分のアイデンティティを揺るぎないものにするのですね。あっ、そうか!人生の本当の転機とは、その分離から統合へ戻ろうという折り返し地点のことなのですね!
「やっと気づいたか。その転機は自我が主導権を持って人生を始めると同時に訪れている。5〜6歳になれば自我は確立しているであろう。そんな子供でさえ転機は訪れているのじゃ。その転機を感じることができるかどうかだけだ。さぁ、その転機とは何だ?」
う〜ん、子供の頃から感じているものですね……。
「ヒントをやろう。その転機というのは楽しいものではない」
楽しくないこと……。私が思い当たるのは孤独です。子供の頃から言葉にできない孤独を感じていました。それは大人になっても残っています。見た目は誰とも社交的につきあっても、心のどこかで孤独を感じています。
「そうだ。孤独というのは、人生の本当の転機の中核をなすものだ。その言葉にできない孤独は、人間の全てが持っている。感じるか、感じないかだけの違いだ。その孤独の正体はわかるであろう」
全てはひとつであることが本質ですから、そこから離れてしまったと感じる孤独ですね。本当はたったひとつのものしか存在しないのに、ひとりひとりが別の人間だと錯覚して生きている。互いがそう思っているから、究極的にはわかり合うことができない。だから言葉にできない孤独を感じるのですね。
「分離していると錯覚するから、孤独を感じる。人生の本当の転機とは、人生に満足しないということだ。何かがおかしいと感じることが必要なのじゃ。だれもが普通だと思って生きている人生に、納得できないものを感じることがある。悲しみや苦しみから逃げずに向き合ったとき、そのことに気づくことができるのだよ」
ひたすら分離へと進んできた人生から、統合へと向かうことを意識するときが本当の人生の転機なのですね。そしてその転機は、孤独や悲しみに向き合うことで気づくことができるのか。私が子供の頃から感じていた孤独の意味が、ようやく理解できました。
羽座間健児さんとのコラボ企画『マルチエンディングの小説トレイン』は連載開始しています。こちらからどうぞ。
『夢で会える 体外離脱入門』は在庫僅少ですので、お求めの方はハート出版さんや書店に問い合わせてください。Amazonでの注文はこちらです。
『ゼロの物語』3部作は電子書籍のみの販売となりますので、こちらのホームページから販売サイトに行ってくださいね。