アフガン情勢は他人事じゃない
アフガニスタンが大変なことになっている。昨日まではタリバンが首都のカブールに迫っているという情報だったのに、今朝になってガニ大統領が国外逃亡したことが報道された。戦乱を避けるため、タリバンに政権を委譲するということらしい。
NATO諸国が20年近くかけて築いてきたものが、わずか数週間で水の泡。アメリカ、イギリス、ドイツやフランスのNATO諸国は、あわてて大使館員等の退避を進めている。日本大使館も職員の避難を決めた。まだカブールは大丈夫だ、という数日前の情報は見当違いだった。
昨日から今日にかけてできる限りの情報を集めた。そしてようやく今回の出来事の概要がつかめたように思う。もちろんタリバン攻勢のきっかけはアフガニスタンからアメリカ軍が完全撤退を実行したから。アフガニスタンの軍隊には十分な訓練を施し、必要な武器も供与した。タリバンにはない戦闘機も配備した。だから撤退しても大丈夫だという判断だった。
ところがこれはアメリカ政府の誤算。ある記事によると、アメリカ政府の幹部はそのことを認めている。少なくとも数年はタリバンの攻撃に耐えるだろうというのがアメリカの判断だった。だけどアフガニスタン政府軍の士気は低く、汚職や逃亡が日常で正確な兵士の数も把握できていない状態らしい。
その一方でタリバンは内紛の危機を抱えつつも、政権奪取という目標で一致団結している。だから勝負にならないらしい。アフガニスタン各州は戦うこともなく降伏している。そのうえアメリカがアフガニスタン軍に供与した武器弾薬が、タリバンの手に渡っている状態らしい。そりゃ大統領も逃げるだろう。
アフガニスタンがタリバン政権になるのは時間の問題。平和的な解決をうたっているけれど、タリバンが政権奪取をしたらそうはいかない。以前から問題になっている女性に対する屈辱的な差別が復活するのは必然。さらにこの20年間のあいだNATO諸国に協力した人間はことごとく銃殺されるだろう。いわゆる粛清が始まるのは確実。
さらにアメリカ軍の撤退に伴って、中国がタリバン政権に接触してくるのは確実とのこと。これはミャンマー情勢と同じで、究極的にはアメリカVS中国という図式になってしまう。つまり戦争となる火種が新たに増えるということ。
この事態は対岸の火事じゃない。日本人はそのことを自覚しておくべき。なぜならこの記事がすべてを語っている。
昨日の日経新聞の記事。アメリカのバイデン大統領は、タリバンがアフガニスタンの首都であるカブールに迫っている状況において、それでもアメリカ軍の完全撤退を続行することを表明している。
バイデン氏は14日の声明で「私はアフガン駐留米軍を指揮する4人目の大統領だ。この戦争を5人目に引き継がない」と強調した。「アフガン軍が自国を守ることができない、もしくは守る意志がないのであれば、米軍がさらに1年間または5年間駐留しても意味がない」とも述べている。
この真意がわかるだろうか? 要するにアメリカはアフガニスタンを見捨てたということ。バイデン大統領、あるいはアメリカ政府にとっては、アメリカの国益が何よりも優先される。多額の税金と自国の兵士の命をかけてまで、アフガニスタンをタリバンから守る気持ちはないということ。
この記事によると、今年の2月の時点でもバイデン大統領が同じことを述べている。もしアメリカ軍が撤退してタリバン政権になったとき、女性が不当な扱いを受けてもアメリカには責任がない、と明言した。アフガニスタンの女性よりも、アメリカ兵の命のほうが大切だということ。
ボクが対岸の火事じゃないと感じるのはこの部分。これをそのまま朝鮮半島情勢に当てはめてほしい。
アメリカ政府の本音としては、アメリカ兵の犠牲を容認してまで韓国を守る気はないということ。つまり状況によっては朝鮮半島からアメリカ軍が撤退することもあり得る。韓国政府が自立できるという判断を大義名分にして。
そうなると北朝鮮が黙っているわけがない。一気に38度戦を超えてくるだろう。そしてタリバンやミャンマー軍部と同じく、北朝鮮の背後には中国が存在している。今回のアフガニスタンの図式は、そのまま東アジアに当てはまってしまう。
日本政府はこの事実を認識するべき。アメリカが頼りになるとは限らない。そのことを想定しておかないと、東アジアで同じことが起きたとき日本政府は恐ろしい決断を迫られることになるから。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。