五輪でわかる国家の実態
オリンピックはスポーツを通じた平和の祭典であり、諸国の政治が影響を与えることは忌避されている。でもそれは建前であって、いつの時代のオリンピックでも、世界の政治情勢が浮き彫りになってしまう。
ミュンヘンオリンピックのテロ事件は、まだ10歳だったボクにも悲惨な出来事として記憶に残っている。このテロは特殊な例としても、今回の東京オリンピックでもある国の事情が明らかとなる出来事があった。
【東京五輪】 ベラルーシ女子陸上選手、帰国拒否 ポーランドが人道ビザ発行
ベラルーシの女子陸上選手のクリスティナ・ティマノフスカヤさんが、日本の空港警察に保護を求め帰国を拒否した。政治亡命を求めての行動だった。
最初記事を読んだときは、彼女の行動理由が理解できなかった。ベラルーシの陸上競技のコーチが、リレーに出場する選手のドーピング検査を怠った。そのことで予定していた選手がリレーに出場できなくなり、クリスティナ・ティマノフスカヤさんに急きょリレーチームに参加するよう指示が出た。
ボクは陸上競技の経験はないけれど、水泳をやっていたのでこれがどれだけ大変なことなのかわかる。同じように走ればいいというものではなく、競技の種類が変わることでトレーニングの方法を最初から見直さなくていけない。すでに日本へ入国している状況でそれを強いるのは、かなり理不尽なこと。
彼女はその不満をSNSに投稿してしまった。たったそれだけで、ベラルーシ政府としては彼女を反体制派と見なした。コーチから強制帰国の命令が下され、ベラルーシに戻った途端に収監されることが明らかだったとのこと。
これだけでベラルーシという国の異常性がわかる。普通では考えらえないこと。そこで少し調べてみた。
ベラルーシの大統領はアレクサンドル・ルカシェンコという人。なんと26年もベラルーシを統治している人物で、「ヨーロッパ最後の独裁者」と呼ばれている。ロシアの後だてを悪用することで、反体制派をことごとく政治犯として刑務所に送り込んでいる。
昨年の大統領選挙では不正を働いたことをヨーロッパ諸国に指摘されていて、国際的な問題となっている。なんと得票率が80%を超えていた。なのにベラルーシではこの選挙を違法とするデモが起きている。それだけで『推して知るべし』ということだろう。
大統領の暴挙はスポーツ選手にまで及び、少しでも反大統領だと見なす行動や発言をするだけで収監される。そんな恐ろしい国だったんだ。クリスティナ・ティマノフスカヤさんが亡命しようとしたのも無理はない。
幸いポーランドが亡命受け入れを表明していて、彼女に対してすぐにビザを発行した。すでにポーランド大使館に保護されているそう。彼女は24歳だけど既婚者で、夫はすでにウクライナの首都であるキーウへ脱出している。妻とはポーランドで再会するとのこと。
この事件を見ていて、日本は平和だなぁとつくづく感じた。どれだけオリンピックに反対しようが、日本政府を批判しようが、いきなり逮捕されて刑務所に送り込まれることはない。他国の複雑な事情が明らかになるのは、オリンピックが有している避けることのできない側面なんだろうね。
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